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「あなた、やっと結ばれたわね」
といって彼を見つめる。
「ふふふ、騙されたね」
彼は突然笑い出した。
「僕は君を孤立させるためにここまでしたんだ。あの結婚届も、偽物だよ。君を騙すためにしこんだ。でも離婚届は本物」
私は信じられなかった。
「嘘よね」
「本当さ」
彼はとびきり冷たい目で見下してくる。
「なんで、なんで、愛していたのに!」
心の叫びだった。
「君は僕の妻を殺した。やりかえしだよ」
ーーーそうか、私はそう、殺したんだ。
あいつと別れるためだけに。
大好きなあなたと結婚するために。
「私じゃないわ、そもそも警察にマークされてないもの」
「そうだね。でも、今証拠をつかんだ。これさ」
それは私の日記だった。
しまった。ここには全て書いてある。なんでーーーなんでーーー
「うそーーーうそよ!アイツに虐げられてきた私の気持ち、あなたには分からないでしょ!?」
ここまで完璧だったのにーーー日記さえ書かなければーーー
「じゃあ、愛する妻を殺された僕の気持ちは?殺したお前に分かる訳ないだろ!?あ!?そうだろ!?」
ーーーー何も言えない。
「そ。そいうことで刑務所へ、君は行かなきゃね」
周りにはーーーー嘘、警察がっ!
「都宮佐美、殺人の容疑で逮捕する」
いやっ、いやっ、いやぁ!
なんで!私は愛してたのに…。
「いやよ、いやぁ!友那さん!やめてー!!」
「今回は愛しているかどうかの問題じゃない。じゃあね」
私は余生をどうやって過ごせばいいのだろう。
生きる価値なんてもはやないかもしれない。
せめて離婚しなければよかったーーー
私はするはずのない後悔をした。アイツの最後の声が頭の中でこだました。
『後悔すんなよ』
アイツの笑い混じりの声。
そっか、アイツは知っていたのね。私の殺した罪を。
あなたは終わり、私は始まりじゃなくて…
『私は終わり、あなたは始まり』
だったのね…。
妻は気にしていなかった旦那の言葉の意味を理解した。
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