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見ると、同じく軍服の礼装姿に身を包んだ鳥飼誠子爵が息を切らしてロビーに到着したところだった。
その背後には唐紅色の振袖を纏った妙齢の女性を連れていた。
「―おお、誠か。何、構わん。まだ時間には余裕があるのでな。ところで、そちらの麗しいお嬢さんはどなたかね?」
鳥飼総監の視線は息子の隣にいる唐紅色の振袖を着た女性に向けられた。
葉菜子は思わず目を瞠った。自分があの日糸切り鋏でメッタ斬りにした振袖はすっかり元通りに修繕されていたのだった。
(―何で?あの着物は、私が切り刻んだはずなのに…!!)
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