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1.行灯部屋の小鳥
「―いけない!もう起きないと、琴江奥様に叱られちゃう…!」
行灯部屋の中で目を覚ました後着物の前をかきあわせて帯を直し、音を立てないようにそっと出て行く。
階段の上では鈴以外のまだ3人の家族が眠っている。
今はもう使われることのない行灯部屋は薄暗く、鈴以外の家族はだれも近寄りたがらない。
昔はそれでも居心地が良かったけれど、背が伸びてきた今はそろそろきつくなってきた頃だ。
「早く、朝ごはんとお弁当の用意をしないと…」
―奥村鈴、17歳。
伯爵家、一枝家に仕える女中だ。
ここに来る前の経緯はあまりよく知らされていない。両親の事すら、不確かだ。
貸座敷で芸者をしていた女と馴染み客との間に生まれた子だとか、はたまた大所帯の家族の元に生まれたが養いきれず、カフェーの女中奉公に出された子なのだとか。
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