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「なんでも彼は幼い頃に大病を患ったそうでな。病気を発症してからお顔に痘痕が出来たとか、大やけどの跡があるとか…」
気まずそうな表情を浮かべてそう話す浩輔に琴江が息を飲むと、背後のドアが勢いよく開いて夜着に身を包んだ葉菜子が姿を現した。
「嫌よ、私!そんな人と一緒にさせられるなんて!まるで身売りじゃないの!!」
「葉菜子…」
二人は揃って一人娘を見つめた。
「…やっと縁談の話が来たと思ったら相手は年上でしかも格下貴族の醜男?!冗談じゃないわ!!いくら家のためだろうと、そんな薄汚い男と一緒になるくらいだったら死んだほうがまだましよ!!」
啖呵を切った娘に、二人は困り果てた様子でなだめた。
「だが格下だろうと相手はなんといっても軍医様だぞ?うちは華族とはいっても名ばかりで女中を一人置いてるだけだし、そんなに金が自由になる身分でも…」
そこまで浩輔が言った時、葉菜子がすかさず口を挟んだ。
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