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「―話を聞いてください。私はそんなつもりは…!」
「…違うとでも?ではそのいががわしいなりをした娘が本物だとでもいうのかね?『一枝葉菜子』は2人いるとでも?」
「……っ!」
「『桔梗屋』の女将からは先月貴殿の家からそこにいる母親と一緒に立涌の花嫁衣裳を買いに来たという内容の手紙を領収と共に送ってくれましてね。それから数日前、うちの愚息と一緒に刃物で切り刻まれた振袖の修繕を頼みにきたとも。そのどちらも、先ほどのお嬢さんだったと」
*
(―何なのよ…、何なのよ!!)
葉菜子は屈辱と怒りで腸が煮えくり返る思いだった。頬にひりひりと走る痛みが止まらない。
『―この馬鹿者が!!』
鳥飼子爵の父親から嫌味を言われた後、父から思い切り叩かれた。
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