メビウスの輪

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 (げん)の当面の悩みの種は部屋のチェストの(かたわら)に目立たない様に置いてある鉢植えの“がじゅまる”だった。  このところ元気が無く、葉がどんどん茶色くなり、パラパラと落ちてしまって、日に日に目に見えて弱っていく。    この“がじゅまる”は二年前に爺ちゃんに買ってもらった。  元はと言えば玄自身が両親に強請(ねだ)って買ってもらった、テーブルサイズのサボテンを枯らしてしまったのが原因だった。  決して、買ってもらった事に満足してしまって、世話を怠ったなどと言う事はない。  寧ろ大切に可愛がり過ぎたと言うべきか。  梅雨時期の植物の水の管理は非常に慎重を期すので、滅多やたらと水を遣ればいいというものではない。  室内で小さな鉢で栽培するサボテンは、水を遣り過ぎてはいけなかったらしい。  土にカビが生え、根が腐り、見る間に枯れてしまった。  玄は少々パニックになった。  大切に思っていたものに愛情を注ぎ、気持ちの通りに行動して、唯々大切に扱っただけの事なのに、それが逆に相手を傷つける事になってしまうとは、思ってもみなかったからだ。  両親は、玄の真っ直ぐな気持ちについて否定的な事は一切言わなかったが、生育に関して何ら下調べする事なく、自分の気持ちを優先させて、大切にしているであった事については敢えて苦言を呈し、暫くの間は玄が動植物の命を預かることを禁じた。
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