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それから直ぐに爺ちゃんは入院した。肺がんだった。
父親や母親は、煙草の吸い過ぎだと言って
── ホンマにしゃあない親父やなぁ
などと言っていた。
玄も煙草は吸い過ぎだったと思うが、それがいけない事だとは思えなかった。
爺ちゃんはまだ七十になったばかりだったので、がんの進行は速く、少しの間家に帰れる事はあったが、一緒に車に乗って出かける事はできなくなってしまった。
去年の冬に容態が急変したと連絡があり、夜中に家族で病院に駆けつけてから間もなく、爺ちゃんは息を引き取った。
葬式では、悲しい筈なのに、何故だか涙が出てこなかった。
婆ちゃんが死んだのは玄が幼稚園の頃だったから、まだよく分かっていなかったし、それ以来身内が死んだのは初めての事で、正直、人が死ぬと言う事に実感が持てなかった。もう会えないと言う事が、言葉の上で理解はできるが、リアリティーが全くないのだ。
出棺の直前に、爺ちゃんの遺影を抱いて、後ろから父親に肩を抱かれた時に、急に悲しさが込み上げてきて、振り返って父親の胸に顔を埋めてわんわん泣いた。
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