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(ブラコンだったのか)違う!絶対違う!(え?弟可愛くないの?ニヤリ)え?あ!私はブラコンだ!弟限定だ!
ドキドキして返事を待ってると、コリウス様が呟く。
「・・・いえ、羨ましいな、と」
美貌の人形に!表情が!
人間に、少年に見える。いや待って。今、なんかクるものあったから。
だめだよ、恥ずかしそうに笑うとか!
・・・ぽろっと出ちゃったしまったみたいな顔しないで。可愛すぎる。
「王女殿下のお茶会は、ほとんど伝説と化しているのです」
ヒペリカム様。伝説?って私生きてるよ?
「殿下と近しくお話ができるとか。本当に羨ましい」
「お気持ちは私もわかります」「私も」
あれ?これは。
一番年少のコリウス様をみんなでフォローし始めた?
私が怪訝そうにしてるから、コリウス様は叱責を受けるとでも思われたのかな。
もう一回、にこっとしておく。文句じゃなくて良かったと、ほっとしたしね。
「そんな風に言ってもらえて嬉しいけど、別に普通のお茶会よ?
特に手の込んだお菓子を用意もしないし。茶葉だって取り寄せたりしないわ」
一応、お金かかってないよーってアピールしとくか。
「・・・」
なに?見るまで信じられないの?
「良かったら、一度いらっしゃる?」
ばっと全員が近寄るから。圧を感じる!え?何怖い。
「「「「「よろしいのですか」」」」」
なんてキレイなハーモニー。
え?全員来るの?
「・・・ええ。ひと月後、皆様にもご招待状をお送りするわね」
動じてない振りしてにっこり笑ったけどさー。
コリウス様ひとりに言ったつもりだったんだけどな。
「そのように囲まれてしまっては、妹と話もできないな」
落ち着いた声は大きくはないのに。どうして響くんだろうね。
さっと5人が左右に分かれると、兄ちゃんがまっすぐに私の前へ来る。
ひとり?
・・・あぁ、お義姉様はむこうで令嬢達と話してるな。
くるんってしっかりとみんなに囲まれてるし、女性騎士までそばにいるし。
男性を近づけるなってきっと頼んでこっちに来たんだろうなー。ほんと兄ちゃんポンコツになっちゃったねぇ。面白いけど。
「あぁ、立たなくてもいい。今夜の主役はお前なのだから」
いや、不敬だからね?立太子秒読みの兄ちゃんと地味王女は比べるべくもないからね?
焦る私をくすっと笑って。結局兄ちゃんは、手を取って立たせてくれた。
だけど立たせてくれただけ。椅子の前から動かないの?兄ちゃん。
私は椅子のステップの上。兄ちゃんの目はほとんど同じ高さにある。
「改めて。誕生日おめでとう。大人の仲間入りもおめでとう。
私は少し寂しいけどね。もう私だけのお姫様ではないのだな」
おおぅ。これは王子様モード全開だねぇ。
張りのある声が響くのはもちろんだけど。そんな優し気な笑顔まで披露しないで!
令嬢のほとんどがこっちを向いてるよ。うっとりした顔で・・・倒れそうな人までいるね?大丈夫かな。
兄ちゃんのつやつやの金髪は肩より少し長いくらい。今日は銀色の美しい編み紐でひとつに結わえてある。少し低い位置だけどこれはポニーテールだな。
イケメンのポニーテール。
ん?って兄ちゃんが首をかしげると、顔の向こうでそれが揺れるとか。
我が兄ながら格好いいよなぁ。
・・・その紐の色はお義姉様の髪色だもん。私だっていつまでも子どもじゃないんだよ?
毎年誕生日には、たくさんのプレゼントに優しい言葉をくれて。
大好き、ありがとうって抱き着いてきたけどさ。今年は兄ちゃんにはもう、お義姉様がいるもんね。
・・・やだな、恥ずかしい。またこれはいじけてるのかな私?
ほんとなら。大人として振る舞い、これから精進いたします。とか返事しなきゃなんだろうけど。
「ありがとうございます。
お兄様と同じくらい素敵な・・・婚約者を見つけてみせますわ」
一瞬だけど、悲しそうな顔をしてくれて私は満足だ。
・・・しかし、何人かの令息がこっちを見てるねー。いや、地味王女、無理だから。って思われてんのかな?今日くらい、夢見たっていいでしょー!
「・・・素敵な婚約者か」
兄ちゃんの声は、響くものではなくなって。
ちょっと手を動かすと、会場の音楽が少しだけ明るくなって。音が大きくなって。
会場の魔道具に干渉したらしい。
・・・声を響かせたほうも魔法だったのかな?
昔は生演奏だったらしいけど、今では魔道具で音楽は奏でるもの。弾き間違いもあり得る生演奏は下に見られてる。
生のほうが贅沢だと思うんだけどなー。って感覚も前世のものだな。
「君たち5人は共同戦線を張ったのかな?他を排除する気かな?」
ゆっくりと全員を見回して、苦笑する兄ちゃんの声は。私たちにしか聞こえてないと思う。内緒話?
「挨拶に来た彼らの中には、もっと話したそうにしている者もいたというのに。
睨みを利かせて、それぞれ自分の派閥の令息を追っ払っていたね?」
ええ?
まさか!
くるりと5人の顔を見るけど・・・。
全員が私から目を逸らす。
本当に?それで後半の方たちは。みんな慌てて去っていったの?
そうだったんならちょっとほっとするな。
「私が嫌われてるのだと思ってた」もん。
声に出てしまった。
さっと青くなった4人は一斉に話し出した。
「そんなことはあり得ません」「ライバルをこれ以上増やしたくなくて馬鹿なことをしてしまいました」「申し訳ありません」「決して殿下を悲しませようと思ったわけでは無いのです」
それから、イベリス様はすっと片膝をつかれ、自分の胸に手を当てられた。
「殿下が笑顔を向けていらっしゃるのが嫌だったんです。狭量でした。
自分が情けなく、恥ずかしい」
そ!そんなことをきっぱりと仰るとは思ってなくて。
熱くなった顔をつい。片手で隠してしまった。
いや、扇。扇を。
・・・焦る!
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