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(せめて兄さんと呼んでほしい)家族団らん
「へ?」
うん。
”へ”に限りなく近い間抜けた声が出た。
え?って言ったみたいにすました顔をしてごまかそうとしてみたけど。
晩餐の席にそろった家族は皆して。ふふって笑ってやがったよね・・・。
お義姉様だけは扇で口元を隠してたけど。うん、笑ってるよね。
「ドレスは何色にしたのだ?」
金髪に紅い眼をした国王陛下は。胡麻化してくれる気なのか?話を進める。
まだ30代半ば。大きな目に高い鼻。イケオジって呼ぶには見た目が若すぎると思う。
「薄桜色です」
デビュタントって伝統的な白色のドレスが多いんだけど。
茶色い髪のせいなのか。顔のパーツの問題なのか。生地をあわせてみたら、なんだか地味に見えちゃって。
ほぉんのりだけど、ピンク色がかったやつにしてもらった。
出来上がったのを先日試着したけど。いい判断だったなぁって思う。
にまぁってお父さん。
「早く見たいな。きっと似合うな」でれでれされても、親父キモい、と思わずに済むのはイケメンだからなのか?前世の私とそう年齢変わらないせいなのか?
「オフショルダーのドレスにしたのよ。とっても可愛いの」
ドレス選びに助言?をくれた王妃様。
赤い髪に水色の瞳。侯爵家からお嫁に来た、きりっとした釣り目で派手な美女。
なんかね。他の王妃候補を苛め倒して今の座を勝ち取った、と言われているらしいんだけど。家族の私は???なんだよねぇ。
このぽけっとした人が、勝ち残ったとはどうしても思えない。他が勝手に自滅したんじゃないのかな。
「ええ。先日試着を見せてもらったけど。とてもお似合いだったわ」
銀髪緑眼のお義姉様。ドレス選びの時にも一緒にいてくれて。
くすくすとした表情の意味は知ってる。
”ドレスはこの形がいい”って駄々こねたのは、私じゃなくてお母さんなんだもん。
「そうか、あなたが褒めてくれるなら、きっと似合ってるね」
兄ちゃん・・・。お義姉様だけ見て、しれっと手を伸ばしてる。
その言葉には私に対する気持ちがまるで無いだろ?!
お。お義姉様にさっと避けられてやんの!
ざまぁ。お義姉様って割と恥ずかしがり屋なんだよね。
金髪碧眼の兄ちゃんは、きりりとした目なのにぱっちりしてる。説明すると変だなぁって私も思う。でもそうなんだもん、仕方ない。
もちろんイケメン。
王子様って言葉にこれほど似あう外見もないな。
優秀で、結構硬派で。自慢の兄ちゃんだったんだけどねぇ。
お義姉様に夢中で周りが見えなくなってる。こんなにポンコツになるとは思いもしなかった。
これはこれで、家族仲良しだからいいのかな?
家族だけだからと、今日は弟も一緒に席についている。
赤い髪に紅い瞳。威圧感を与えそうな色味なのに。垂れた目が。ふっくらした頬が可愛らしさを強調する。
「僕もドレス姿見せていただいたんです。姉さますっごく似合ってました!」
嬉しいぃぃ!
ありがとう、と声をかけると。
「どうして僕だけ夜会に出れないんだろう。姉さまエスコートしたかったのに」って言ってくれる。
ああぁっぁぁぁぁぁ。嬉しい。可愛い。私もそうしてもらいたい!
家族もみんなにっこにこで第2王子を見ている。
しかし。
・・・そうだ。夜会だ・・・。それが”へ?”の始まりだった。
「そうだわ・・・お父様。夜会の規模を・・・私、聞き間違えたようなんですが」
高位貴族家全部に招待状を送ったって?どんだけの規模だ?!
兄ちゃんの14歳のパーティーに次ぐ規模じゃない?
わが国では王位継承権の低い王女だよ??
まさか!
へ??ってなるよねぇ?
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