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兄ちゃんと声に出しては呼んでない!(いやそれすらやめてほしいんだよ)
「やはり小さかったか?
高位貴族家だけの招待に限ったのは間違いだったか・・・」
小さい??
お父さん何を言ってる?
「でも王女が降嫁できるのは伯爵家までという規定がありますわ」
「しょう爵させてしまうという手もあるからなぁ」
「まぁ!そうですわね。
今回、素敵なご子息がいなかったら、もう一度夜会を開きましょう!」
「そうだな。次回こそ納得のいく規模に・・・」
ちょっと待ったぁ!
「ま、待ってください。違うんです。そんな大きな夜会だなんて思ってなかったんです」
国王夫妻の会話が、なんだかどんどん不穏になってきて。慌てて口をはさんでしまう。不敬はお詫び申し上げます。
「大きい?」
お父さん、首をかしげないで!
「誕生祝も兼ねた、王女の婚約者を探す夜会なんだぞ?」
兄ちゃんまで、首をかしげてる。
「そ、そういうものですか?
私はいとこや叔父様、叔母様など血のつながった方々と。
選ばれた婚約者候補のご令息が、数人参加なさるくらいとばかり」
前世の。幼いころの誕生パーティー想像してた。
家族全員がじいいっと私を見てくる。
「「「「選ぶのはこっち・でしょ」」だろう」」
4人で声を揃えてくるな!
・・・いや、お義姉様。扇を広げた時点でバレバレ。こっそりまた笑ってるでしょ。
そりゃ、あなたたちならね。選ぶのは自分でしょうよ!
私は違うぞ。地味王女だからな!
言いたい気持ちはぐっと我慢。みんな本当に私を可愛がってくれているから。
それでも、つい表情に出たのか、青くなっちゃったのか。
ふっと威厳のあるほほえみを浮かべたお父さんは。
「あまり気負わずに探してみればいい。
気に入る男がいなかったら次も、その次もあるのだから」
気を軽くしようと言ってくれたかもしれないけどねっ!
そんな・・・合コン数打ちゃ当たる的に言われてもさぁ。
うん。
貧乏性ってこんな時にも発揮されるらしいね。
いくら個人資産からだとは言え、そんな夜会を何回も開くなんて有り得ない!
どうあっても、一回で婚約者を見つけてやる!
・・・そう覚悟する羽目になったよ。
・ ・
「お綺麗ですわ、姫様」
まだ暗いうちからたたき起こされて。いったいどうなるんだと思ったけれど。
まる一日かけた成果はあったよ・・・うん。
自分でも鏡の中の自分はすごいと思う。
オフショルダーの薄桜色のドレス。わが国では、デビュタントのドレスには刺繡は行わない。そのためすっきり見える。
代わりに長手袋は、とても緻密なレース編みで作られていて。
手を入れるときに引っ掛けるんじゃないかとドキドキしたよ。
胸元のペンダントは、大きなピンクダイヤモンドの周りを小さなダイヤが囲っているもの。
これは代々王家に伝わる装飾品。デザインは少し古臭いけど、地味な私に似合う気がする。
はぁぁ。
誰?って思うほど綺麗。
侍女たちの手腕に感動しちゃうね。
ちょっとだけ見惚れるけど。すぐに冷静な私が帰ってくる。
隣に立って涙を浮かべてくれている専属侍女のガーベラのほうが、ずっと整った顔立ちだよねー。
・・・いやいや、ちょっと緊張しすぎてるな。
頭の中が逃げようとしてるよ。
私なりに。すっごい綺麗だ!頑張れ、私!
今夜必ず婚約者を探さねば・・・はぁぁ。
王族は、揃って会場へ入る。
控室へ行くと、もうみんな待っていてくれた。
「遅れまして申し訳ございません」
きちんと礼をとっただけで泣き出しそうなお母さん。
「とっても綺麗な礼よ。あぁ、今日から大人の仲間入りなのねぇ。嬉しいのに寂しいわぁ」
目を見張って。それから微笑んでくれるお父さん。
「おお!よく似合っている。その色はお前のためにあるようだな。
二の腕が出ていないのもいい。清楚で可憐だ」
兄ちゃんとお義姉様も、お世辞を言ってくれた。
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