お茶会と言うより秘密会議・・・会議の体裁はしてないな。秘密お喋り?

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お茶会と言うより秘密会議・・・会議の体裁はしてないな。秘密お喋り?

翌日は、3人目の候補者とのお茶会。 そう思って準備してたのは、イベリス様と同じ応接室。 もっと早くヤプラン様のこと思い出していたなら、場所は孤影の中庭にしたのにな。 ふふん、ふふふん♪とか、つい鼻歌を歌ってた。 ガーベラは髪を整えてくれながら。 「姫様はご機嫌ですね。サッカラ辺境伯家のヤプラン様は・・・緊張しないでいられるお方だったのですね」 うん、いつも遊んでくれた人だったよ。昨日は謝り損ねちゃったから、まず忘れてたことを謝らないと。 でも絶対怒られたりしない、嫌われたりしないって自信がある。 「ヤプラン様はとってもとっても優しいから」 笑う私にガーベラは心配そう・・・? はっ! まだ話してなかった。 私は思いつくままに昨日知った事や思い出したことを伝える。それから兄ちゃんの言葉も。 急に筆頭侍女の職に就いたうえ、上司である侍女長がすぐに交代したから。ガーベラには、伝えられていない情報があるようだ。今回の話もそのひとつだろうな。隠す気は無いが、進退によっては伝えられない事もある。一度説明の時間を取るから、都合のいい時に第1王子執務室へ面会の申請をしてくれ、との事だった。 「進退?何を今さら」 すっごくにっこり笑って呟いたガーベラが、怖い。・・・これ、兄ちゃんに怒ってるねー・・・。   ・  ・ 侍女はガーベラひとり。メイドをひとり。 ヤプラン様も侍従をひとり。メイドをひとり。 イベリス様とのお茶会と比べると、部屋に入った従者の人数はかなり少ない。 護衛騎士にも、部屋の外で待機してもらう事にしたから余計少ないね。王族が謝るって結構大変。立ったままではあるけれど、人払いしてるうちにまずお詫びを・・・ん? ヤプラン様に付き従ってるふたりは、サッカラから連れてきた使用人、よね? イベリス様も、お茶会の時。自分の侍従をひとり連れていらしてたし。通常はそうのはずなんだけど・・・このふたり。王城で見たことがある。え?なんで? 私の視線ににこりとしたヤプラン様は。 「王女殿下、紹介させていただきます」 定型の挨拶も無く、部屋に居る従者の名前を順に告げた。 それは、私が連れてきたメイドの名前も、で。 「え?」 「以上、3名がサッカラ辺境伯家の息のかかった者です」 えええ?! 何回も瞬きしてる私をにんまりと笑うヤプラン様。 息のかかった者、ってそれは。昨日話してた忍者?のこと? 「・・・ええと。 ヤプラン様の後ろのふたりは、図書室にいつもいる文官ですよね?」 いつも何か書いてる人と、大量の本を運んでる人。 髪型と服装だけで、こんなに印象が変わるのね。 「ご慧眼恐れ入ります。あすこには常時人が居ますが、そのほとんどがサッカラ家の手の者です。図書室には文官や官吏も出入りしますので、情報収集と王族の守護を兼ねています」 う。王族の守護、と言いながら私を見てる。侍女や警護の者から逃げ出していたことを揶揄されてる・・・。そんな時にもこっそり守ってくれてたんだね、ごめんなさいぃ。 あれ?でも。 「ヤプラン様と会った時には、図書室には誰も居なかったわ」 「私が居ましたから。 あの日、城内の者を掌握いたしました。まさかあのタイミングで殿下にお会い出来るとは思ってもいませんでしたが」 すっとガーベラが動く。 あ。図書室で会ったこと言ってなかった。後で怒られるなー。 「お話し中に失礼いたします。このメイドはわたくしと同じ時期に王城で働きだした平民のはずです」 微笑をたたえてるけど、警戒してる声。 お茶会でヤプラン様に謝る、と伝えたから。ガーベラは一番信用できるメイドを連れてきてくれたはず。 それが、他の人に仕えてる人間だと言われたんだものね。 こんな場で、侍女が発言するのはマナー違反だけど。今ガーベラの中で、ヤプラン様は明確に敵なんだろう。 ヤプラン様は・・・私のメイドに目線だけで合図した。 私に近寄らせまいと警戒しているガーベラを避けて、すっと歩み出てきた彼女は「お呼びですか?お兄様」と。私が兄ちゃんに言う時と同じイントネーションで。ヤプラン様へ声を掛けた。 はっと息をのんだガーベラは「姫様に、そっくりの声と仕草・・・」と呟いた。 うん・・・。自分でもなんだか似てると思う。 「わざと言わせただけで、僕との血のつながりはありません。 彼女は、殿下の身代わりとなるべく選ばれた者です。お生まれになった時より選ばれてはいたものの、承認すべき上司がおらず。本日のご紹介となった事、お詫び申し上げます」 ええ?!私にも居たの?!影武者!! ・・・私、びっくりしてばっかりだよ。   ・ ガーベラが警戒したままなので。 ヤプラン様は、3人掛けのソファの前へ立ち、ソファの後ろには3人を立たせる。 ガーベラは仕方なく、その向かいのソファへ私をエスコートして座らせてくれて、私の横へ。後ろへ下がらずに立っている。 ガーベラもびっくりしてるはずなのに、ほとんど表情に出してない。すごいねぇ。 「納得いくまで、飲食は控えましょう」 ガーベラは私から目を離したくないだろうし。向かいに居るメイド達にお茶を淹れさせたくはないだろうし。 喉が渇く前に、話をすすめないと。私はヤプラン様にも座ってくれるように合図した。 ん-と。じゃぁまず。 「ヤプラン様。ここに居る人には気を遣わなくてもいいのなら、私は昨日みたいにしてほしいです」 くすくす。 「では。ゼフィと呼んでも構わない?」 ええもちろん。 ガーベラが息をのんだのに気付いたけど。 「ガーベラも。聞きたいことを聞いていいわ」と言うと、納得してくれたみたいだった。 「王宮へ勤める者は、たとえどんな理由があろうとも身分の詐称は許されません。・・・彼女の本当の名前と年齢を教えてください」早速質問するガーベラは、冷たい視線を私のメイドへ向けてる。 「バイモ。16歳。彼女はなにひとつ嘘はついてないよ」 そう言うヤプラン様の視線を受けて、バイモのほうも話し始める。 なんか変な感じ。そのしぐさも言い方も、私に似てるんだもの。 「王都にあるパン屋の娘ですの。10歳の時に王宮へメイド見習いとしてあがりましたわ。年齢が近いこと、侯爵様からの推薦状がある事から、王女殿下のおそば近く仕えるメイドとして雇われています」 それは、伯母さまが降嫁された侯爵家の名前だった。 「・・・経歴を詐称しているのではなく、本当に平民だと言うのですか?」 平民だと言うのなら10歳で働くことはあり得る。貴族だと14歳になるまで認めてもらえないけれど。 にこ、と私のように笑ったバイモを。ガーベラは少し悲しそうに見て。 「身代わりに選ばれる者を貴族家から出さないのは、サッカラ家の怠慢ですか」 低い声で怒った。 「陛下の治世が平和だとしても、王族につけられる影武者に危険が無いとは思えません。少なくとも、魔法や剣を扱えない少女にさせる仕事ではありません」 あぁ、やっぱりガーベラは優しいな。 そうだよね。私もよ。 「危ない時に、私と代わる人など最初から要らないわ。 ガーベラのお小言を代わって聞いてくれる人が欲しいんだもの」 へらっとそう言うと。 「姫様!」 きっとつい。いつものように私を叱ったガーベラは、はっと口を押さえた。 ふふ。 ヤプラン様も、くすくすと笑う。 「ゼフィのそばに居てくれる人が、いい人で良かったよ」 部屋の雰囲気はほっこりする。 「そうなの。ガーベラは優しいの。ヤプラン様と同じなの」 「ゼフィの影武者候補は3人しか居ないが、その中で最も魔法力があるのはバイモだ。 バイモの祖父は子爵だったので、彼女は魔法が使える。それに短剣の腕も確かだ」 やっぱりね。自分の身を守れないような子に無理を押し付けるヤプラン様じゃないと思ったもの。
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