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よし、謝っ・・・(たのは違う事だねぇ)ったっけ?あれ?
「3人しか、って仰ったけど。影武者候補としては少ないの?」
手を離してもらって、お茶を飲みながら聞く。ヤプラン様はちょっと苦笑した。
「・・・そうだね。先ほどの身長の事もそうだけど。殿下方がどう成長するのか、は予測しかできないからね。
ある程度の人数を確保して、成長に合わせて減らしていくのが基本。殿下がたの成長が止まれば、今度は体型の似た親世代の者から探すこともあるけど」
やっぱり後ろの侍従の振りした人が、うんうんと頷く。お父さんより年上みたいよねー。そうなの?と直接聞いてみる。
びっくりされちゃったけど、ガーベラだって平気で質問してたじゃない。
ヤプラン様も促してくれて、昔のことを教えてもらった。
「先ほど、侍女殿が仰っていた通り、王族の身代わりは危険も多うございます。代々、サッカラ家血縁者で魔力の高い方が務めておられました」
へー。
「王族の婚約者がお決まりになりますとほぼすぐに人材を確保すべく動き始めます。影武者はどうしても、保護対象者より少し年上である方がよろしゅうございますから」
ほー。
「そんななか・・・ここ2代続けて、候補者の確保が出来なかったことには、我々も忸怩たる思いを抱えております」
ふー、ん?
2代、と言うのはお父さん達と、私たちきょうだい?
「何か原因があったの?」
「影武者に選ばれることは誇りであり、出世でした。功を欲するあまり、我々は目先のことしか考えなかったのです」
は??
うーん、どこから話そうか。そう呟いたのはヤプラン様で。
結局、私に質問をしてきた。
「ゼフィは。自分がおばあ様似だ、と言われてることを知ってる?」
もちろん。軽く頷く。
茶髪茶目はコンプレックスで、昔は私だけ血が繋がってないのかもとさえ思ってた。
「サッカラは領地替えした今も、国で一番魔獣出現の多い土地だ」
そういう土地を選んで領地替えしたんだよね。調べた。
「影の仕事につく者も居る事から、騎士も魔法使いも幼い頃から鍛え上げられる。身代わりの候補となればさらに厳しい訓練が課せられる。
だけど、優秀な者から選ばれていくわけじゃない。では他に、必要なものは何だと思う?」
?なんだろう。似た体型?似た面立ち?
ヤプラン様はにこっと笑う。
「言葉や仕草は努力で身に着けるものだ。
体型は・・・ある程度ならば誤魔化すことが出来る。さすがに身長が頭ひとつ分以上違うと厳しいけれどね。
顔立ちはもっと簡単だ、化粧でなんとでもなる。
だけど・・・」
あ。
「髪と、目」
そうだよ!
この世界には、髪を染める魔法も薬もない。カラコンも無い。
思わずバイモに目をやる。王宮のメイド服とセットのホワイトブリムは、髪を結構隠してるけど。それでも覗く前髪の色も。瞳も、私のと似てる。バイモのほうがほんの少し明るい?と感じる程度だ。
正解した私にまたこくこくと頷いて、侍従もどきさんが口を開いた。
「前国王夫妻の婚約が調うと。サッカラの分家筋では、茶髪茶目の方との婚姻が増えました。あの頃生まれたお子様方は、同じ茶系統の髪と目を持つ方が多かった。我が子を王族のそば近くお仕えさせようと皆が思っていた」
「そんな思惑に反して。
国王陛下も。その姉である侯爵夫人も。髪色は」
ヤプラン様が口を挟んで。
「金色ですねぇ」私が答えた。
ほんの少し色合いは違うけど、ふたりともブロンドだ。
「ふたごでいらしたのですから、本来なら少なくとも10人の影武者候補が居なくてはならなかったのです」
もどきさんは凄く悔しそうに唇を噛んでる。
「サッカラには、その頃。金の髪と魔力を持つ同じ年頃の子どもはふたりしか居なかったそうだよ」
ヤプラン様は肩をすくめた。
「自分たちの子が茶の髪色だったから、王家にも茶色の髪の王子王女が生まれる、と疑いもしなかったそうだ」
あらまぁ。
そのふたりが、お父さんたちの影武者なんだなー。
・・・あの。ひとだよね。お父さんと一緒に居た人。
何か思い出しそう。
だけど、ヤプラン様が身を乗り出すようにして話しかけてきて遮られた。
「アマルの時には候補は6人」
結構居る!
「現王妃様が婚約者と決定した時にも、赤い髪や、水色の瞳の方との婚姻が増えたそうだけど。前回の教訓を生かして金の髪の方との婚姻も奨励された。顰蹙を買っていたが、婚姻を待つ者も出た。
だからアマルの時にはそれなりに候補が確保できたんだ」
最初6人だった候補は、ヤプラン様が領地へ帰る時点で3人に減らしたそうだ。
兄ちゃんは私と違って顔合わせが済んでいたので、彼らを任せたのに。
あの3人、今まで勝手にこき使われてたんだよ。僕が連絡を取れないからって。
ヤプラン様は眉を顰めてる。
「戻ってきてびっくりしたよ。彼らには申し訳なかった、反省もしてるよ。
アマルが人を遊ばせておくはずが無かったよねぇ」
すでに兄ちゃんの影武者は決定させたけれど。他の2人も兄ちゃん付きの文官にするしかなかったそうだ。どうやら機密事項まで手伝わされていたらしい。所在は辺境伯にあったというのに・・・。兄ちゃんらし過ぎて、ごめんなさいと謝っておいた。
「・・・しかしまさか。今さら茶の髪色の王女殿下がご誕生なさるとは思ってもおりませんでした」
もどきさんはぽつりと漏らした。
「っ」
文句言う寸前のガーベラを。振り向いて止める。ガーベラは私が髪色を気にしてたことを知ってるから。ムカッとしちゃったんだと思う。
雰囲気を読んだヤプラン様は凄く軽い口調で茶々をいれた。
「前回だったなら!って母上もつい言ってしまってたよ。
もしそうなら、ゼフィには20人以上の影武者候補を用意できた。侍女殿の”ながーい”らしいお説教もそれだけ人数がいれば楽だったろうにね」
ひとこと聞いたら交代!って図が浮かんできて。笑うヤプラン様につられて笑・・・いかけて。
?何かに引っかかる。茶色の髪の20人の私。
・・・髪色で候補が決まる。
王家に生まれる子どもと、同じ髪色の子どもを得るために婚姻をしてた?
「そんなの」
髪色だけで伴侶を選ばせるなんて、失礼だし迷惑よ!
「そんな結婚」
続けて文句を言おうとした私を。ヤプラン様は笑顔で止めた。
「心配は要らない。どの夫婦も仲はとてもいいから」
言おうとしたことをとっくに見透かされてる。
「条件を加えて、配偶者を探すってことの何が問題かわからないな。
優しい人がいいなぁとか、身長の高い人がいい、とか言うのと変わらないだろう?
相性の悪い婚姻を無理強いはしていないしね。
髪色が条件の婚姻だからこそ、相手に歩み寄る努力はサッカラの家訓に刻まれている」
諭すような言い方・・・。
本当に?
なんかこう、むわむわする。貴族社会では条件が付いた結婚は当たり前と考えられてるけど・・・。やっぱり気になるし、なんか嫌だ。
離婚率を調べる!って兄ちゃんに言おう。
兄ちゃんはすごく優秀なんだもの、すぐに調べてくれるはず。
領地での不幸な結婚があるって証明されたら、影武者制度なんか無くしてやるんだから!
むぅっ。と口を尖らしてるのに、ヤプラン様はにこにこしたまま。
「ゼフィは本当にいい子だね」って。
・・・褒めてくれても、胡麻化されませんからねっ!
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