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(家族の中でも特に過保護な、ひとり)特に?お母さんのこと?
お前ひとりだけ、と特別感出してやりかったんだ!って嘯く兄ちゃんが浮かんじゃう。
絶対!首謀者は兄ちゃんだ。
14歳の時に、一緒にデビュタント迎えた令嬢と延々踊らされた。とキレ気味だったもん。
まだ婚約者が決まってなかったし、全員と踊らざるを得なかったそうだ。
私だって、それを狙った令息何人もとダンスなんて、疲れるから嫌だけどさ。
同じ日にデビューした仲ですから。って付きまとわれるのも嫌だけどさ。
でもそれは、兄ちゃんほどの美形だから起こったことであって。
私にはそんな被害はない!そう決まってるっていうのに。
・・・それでも。
それでもなんだか気恥ずかしくって、頬が緩んじゃうな。
きっとおんなじことが起こると、家族だけは思ってくれたってことだもん。
しかし、ね?
ちらっと兄ちゃんのほうへ視線をやる。
玉座を中心に弓なりに椅子が配置されているから。顔が見える。
じろっと見る私に兄ちゃんはにっこり笑い返してきた。
せめて教えておいてくれ!
知ってたら、こんな風に聞いたりしなかった。
「話してくださってありがとう。
・・・恥ずかしいですわ」と扇で顔を隠しちゃう。
家族が私を甘やかして、臨時の夜会を開いたなんて。5人には悪いけど、知らないままでいたかったよ。
いったいどれだけの人がばかばかしいと思ったことか・・・。申し訳ないね。
くすっと笑ったヒペリカム様が「お可愛らしい」と聞こえるか聞こえないかというくらいの声量で言う。
優しい瞳は今、柔らかい緑色に見える。なんだか本当に好かれてるような気がして照れちゃうね。
視線から逃げると。無表情なイベリス様の口角が目に入って。端がほんの少し上がってる?私を見てほほ笑んでくれてる?
何にも言わない彼の気持ちを理解したような気になってしまった。
・・・だめだ。調子に乗っちゃいそう。もうやめてほしいのに・・・。
こほ、と咳払いをして。
「実は私も、本日の夜会デビューを狙っていたんです。
そうすれば、王女殿下と最初に踊れたのはきっと私でしたから」
公爵家三男・コリウス様までそんな事を言い出してくれて。
私と同じ年だったのか。人形みたいに整った、大人びた顔つきだから。年上だとばかり思ってたよ。
言われてみれば。後ろへなでつけたオリーブ色の髪を時々触ってたのは、額を出すことにまだ慣れてなくて気になっていたのかも。
ナルシストなのかしらと勝手に思ってたよ。ごめん。
・・・確かにコリウス様は身長は低めだ。まっすぐに目が合う。立ち上がって並んだら、私より少し高いくらいかな。
14歳なのだったら、身長が伸びるのはこれからだよね。
デビュタントは。その夜会で優遇してもらえるのが、暗黙の了解。
もしも、ダンスを申し込まれたら断ったりしてはいけないし。コリウス様は公爵家の人だから。確かに最初に踊った可能性は高い。
彼と踊る・・・。
にこりとこちらを見る瞳はエメラルド色で、やっぱり人形みたいな美貌だね。並んだら私の地味さが目立つなー。
勝手に想像して、少し凹んだ。
・ ・
私にだって。少ないけど、令嬢の友人は居る。
王子や王女は、王宮でのお茶会という体裁で、近い年齢の子どもと顔合わせするものだから。相性が良い人を見極めて。また次回も招待されて。
そうやって仲良くなっていく。
兄ちゃんの側近も、幼馴染と呼べるひとばかりのはずだ。
結構遠慮なく話の出来る友人ばかりなんだけど。
今日は。こそっとウインクしてくれたり小さく手を振ってくれたり。みんな礼だけ取って話しかけてはこない。
『お見合いがんばれ!』ってプレッシャー感じるんですけど?
「姫様。本日はおめでとうございます」
今夜初めて声をかけてくれたのは、伯爵家のぽーちゅ。なんとピンクブロンド!!初めて会った時にはきっとヒドインだ!と思ったよ。
マナーのお勉強が嫌いだし、誰とでもすぐ仲良くなっちゃうし。
・・・そう、私ともすぐ仲良くなってくれた。
ぽーちゅのおかげで他のご友人が出来たって言ってもいいと思う。
「ありがとう、ぽ・・・ポーチュラカ様」
公の場所で愛称はだめよね。だけど気になって。
「ぽーちゅも先週夜会デビューしたの?」
小さく聞いてみる。
「あ、もう言ってもいいのね」小さく返事したぽーちゅはにっこりと。
「はい、嫌だったけど兄さまと踊りましたの。ね?」
そう隣の令息へ話しかけた。
「まったくお前は・・・」
言いかけた彼だったけど。ここはいつものお茶会じゃないから。
すっと姿勢を正して。
「姫様。本日はおめでとうございます。やっとまたお話しできると思うととても嬉しいです」そう笑ってくれた。
ひとつ年上の彼は、ぽーちゅの兄、ローダンセ様。
去年夜会デビューされたから、もう1年。私のお茶会へはいらっしゃらなくなっていた。
「私もです。最近はどんな本をお読みですか?」
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