(家族の中でも特に過保護な、ひとり)特に?お母さんのこと?

1/1

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ

(家族の中でも特に過保護な、ひとり)特に?お母さんのこと?

お前ひとりだけ、と特別感出してやりかったんだ!って嘯く兄ちゃんが浮かんじゃう。 絶対!首謀者は兄ちゃんだ。 14歳の時に、一緒にデビュタント迎えた令嬢と延々踊らされた。とキレ気味だったもん。 まだ婚約者が決まってなかったし、全員と踊らざるを得なかったそうだ。 私だって、それを狙った令息何人もとダンスなんて、疲れるから嫌だけどさ。 同じ日にデビューした仲ですから。って付きまとわれるのも嫌だけどさ。 でもそれは、兄ちゃんほどの美形だから起こったことであって。 私にはそんな被害はない!そう決まってるっていうのに。 ・・・それでも。 それでもなんだか気恥ずかしくって、頬が緩んじゃうな。 きっとおんなじことが起こると、家族だけは思ってくれたってことだもん。 しかし、ね? ちらっと兄ちゃんのほうへ視線をやる。 玉座(お父さん)を中心に弓なりに椅子が配置されているから。顔が見える。 じろっと見る私に兄ちゃんはにっこり笑い返してきた。 せめて教えておいてくれ! 知ってたら、こんな風に聞いたりしなかった。 「話してくださってありがとう。 ・・・恥ずかしいですわ」と扇で顔を隠しちゃう。 家族が私を甘やかして、臨時の夜会を開いたなんて。5人には悪いけど、知らないままでいたかったよ。 いったいどれだけの人がばかばかしいと思ったことか・・・。申し訳ないね。 くすっと笑ったヒペリカム様が「お可愛らしい」と聞こえるか聞こえないかというくらいの声量で言う。 優しい瞳は今、柔らかい緑色に見える。なんだか本当に好かれてるような気がして照れちゃうね。 視線から逃げると。無表情なイベリス様の口角が目に入って。端がほんの少し上がってる?私を見てほほ笑んでくれてる? 何にも言わない彼の気持ちを理解したような気になってしまった。 ・・・だめだ。調子に乗っちゃいそう。もうやめてほしいのに・・・。 こほ、と咳払いをして。 「実は私も、本日の夜会デビューを狙っていたんです。 そうすれば、王女殿下と最初に踊れたのはきっと私でしたから」 公爵家三男・コリウス様までそんな事を言い出してくれて。 私と同じ年だったのか。人形みたいに整った、大人びた顔つきだから。年上だとばかり思ってたよ。 言われてみれば。後ろへなでつけたオリーブ色の髪を時々触ってたのは、額を出すことにまだ慣れてなくて気になっていたのかも。 ナルシストなのかしらと勝手に思ってたよ。ごめん。 ・・・確かにコリウス様は身長は低めだ。まっすぐに目が合う。立ち上がって並んだら、私より少し高いくらいかな。 14歳なのだったら、身長が伸びるのはこれからだよね。 デビュタントは。その夜会で優遇してもらえるのが、暗黙の了解。 もしも、ダンスを申し込まれたら断ったりしてはいけないし。コリウス様は公爵家の人だから。確かに最初に踊った可能性は高い。 彼と踊る・・・。 にこりとこちらを見る瞳はエメラルド色で、やっぱり人形みたいな美貌だね。並んだら私の地味さが目立つなー。 勝手に想像して、少し凹んだ。   ・  ・ 私にだって。少ないけど、令嬢の友人は居る。 王子や王女は、王宮でのお茶会という体裁で、近い年齢の子どもと顔合わせするものだから。相性が良い人を見極めて。また次回も招待されて。 そうやって仲良くなっていく。 兄ちゃんの側近も、幼馴染と呼べるひとばかりのはずだ。 結構遠慮なく話の出来る友人ばかりなんだけど。 今日は。こそっとウインクしてくれたり小さく手を振ってくれたり。みんな礼だけ取って話しかけてはこない。 『お見合いがんばれ!』ってプレッシャー感じるんですけど? 「姫様。本日はおめでとうございます」 今夜初めて声をかけてくれたのは、伯爵家のぽーちゅ。なんとピンクブロンド!!初めて会った時にはきっとヒドインだ!と思ったよ。 マナーのお勉強が嫌いだし、誰とでもすぐ仲良くなっちゃうし。 ・・・そう、私ともすぐ仲良くなってくれた。 ぽーちゅのおかげで他のご友人が出来たって言ってもいいと思う。 「ありがとう、ぽ・・・ポーチュラカ様」 公の場所で愛称はだめよね。だけど気になって。 「ぽーちゅも先週夜会デビューしたの?」 小さく聞いてみる。 「あ、もう言ってもいいのね」小さく返事したぽーちゅはにっこりと。 「はい、嫌だったけど兄さまと踊りましたの。ね?」 そう隣の令息へ話しかけた。 「まったくお前は・・・」 言いかけた彼だったけど。ここはいつものお茶会じゃないから。 すっと姿勢を正して。 「姫様。本日はおめでとうございます。やっとまたお話しできると思うととても嬉しいです」そう笑ってくれた。 ひとつ年上の彼は、ぽーちゅの兄、ローダンセ様。 去年夜会デビューされたから、もう1年。私のお茶会へはいらっしゃらなくなっていた。 「私もです。最近はどんな本をお読みですか?」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加