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私が手足を動かせるようになった頃、先程の女性……リズは私をシャワー室に案内し、着替えを渡してくれた。
その後私は談話室に案内された。
そこには数十人の今日生まれた若者と白衣を着た職員が数人集まっていた。
「テレビを付けるわね。ちょうど今日はゴル博士の演説の日よ」
そう言って職員が談話室のテレビをつける。
画面にヨボヨボの紳士が現れ、紳士は介添えされながら椅子に座る。
―――以前より映像がよりリアルになっている。
いえ、それよりまだこのゴル博士生きていたのね。
私は適当な場所の椅子に腰掛ける。
まだ長時間立っているのは身体が辛い。
「もう指が無いな」と誰かが言った。
確かにゴル博士の両手の指はほぼ無い。
目は窪み、頬も…酷く爛れているかのようだ。
『こんにちは、皆さん。1年振りですね。初めましての方々、誕生おめでとう。私は今日で200回目の目覚めとなりました』
ゴル博士はもう何度も繰り返すコールドスリープと目覚めで、以前から声も出せない状態になっていた。
この音声はゴル博士の脳からの信号を元にAIで創り出されたものだ。
きっと指の紛失も繰り返す低温による壊死のせい。
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