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―――ゴル博士の放送のちょうど1ヶ月後に『あの丘』で会おう。
新しい環境、新しい職場に慣れた頃、私は『あの人』との約束の日を心待ちにしていた。
パートナーが出来た時点で会いには行かない、その時のパートナーを大切にするという制限付きの約束。
結月の時は2度目の放送を迎えるまでに夫に見染められ、結婚していた。
何せ、『私』である期間は7年しかない。
次に蘇ったとしても、それは『私』ではない。
そして、無事に蘇る保証など無い。
予約していた『身体』が、成長途中で死んでしまう事もあるからだ。
その時、運良く未予約の身体があれば変更はしてもらえるだろうが、子供を2人以上授かる事がなかった夫婦、独身のまま7年を迎える者による予約が後を絶たないため、変更は叶わないと思われる。
とにかく、無駄な時間は無い。
生きている事を実感したいし、働かなくては生きてもいけない。
だからこそ、本気で愛する人と巡り合いたい。
100年ほど前に『結子』と運命的な出会いをした、あの人。
お互いパートナーは先立っており、結子自身も残された時間は7日間と僅かだった。
その僅かな時間は、今までの記憶を遡ってもあり得ない程情熱的で充実した時間だった。
結子が死んでしまう前日に、お互いを探していつか結婚しようと約束した。
結子の最後を、あの人は看取ってくれた。
約束した日に二人で海に沈む夕日を眺めた、あの丘。
目覚める度、あの丘であの人が来る保証もなく、ひとりで涙に沈む夕日を眺めていた。
次こそは会えると信じて……。
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