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「王子に溺愛されて、この度望まれて望まれて婚約の儀がつつがなく執り行われたミーナさま」
今のわたしはの枕詞はこれだ。王子から愛されて愛されてどうしても望まれて、といったニュアンスの形容詞がついて回って表現された。
王家始まって以来の慶事であるような騒ぎっぷりだ。
貧しい家の娘が王家に嫁ぐのだ。それなりの枕詞は必要だし、ドラマティックな展開に国中が沸いた。
わたしの勤め先は、役員を始め、蜂の巣をつついたような騒ぎだった。いきなりミーナフィーバーが起きたような印象だ。当のわたしは、結婚すれば今の仕事を続けられないと説明されて意気消沈していた。
「考えてみてもごらんなさい。あなたにはもっと大きな仕事が待っているのよ。その仕事はあなたにしかできない。今の仕事は後人にお譲りなさい。あなたの後輩は立派に育っているわよ。」
「任せてくださいっ!ミーナさん!」
先輩や後輩にそう説得されて、「ミーナさま」とかしづく洒落者の上司にも説得されて、わたしはまもなく職場を辞めることになった。
街を歩けば盛大な祝福の声をあちこちから浴び、職場でもチヤホヤされ、婚約の儀が終わり、わたしは日常生活がこれまで通りには送れない状況になっていた。
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