忠犬ポチ公

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「ねえ、この犬、飼ってもいい?」 家に帰ってそう聞くと、母さんは、 「そうねえ・・・・・・」としばらく考えていたけれど、 「父さんがいいって言ったらね」 そう言って、ボクが抱いていた子犬の頭を撫でていた。 会社から帰ってきた父さんは、 「お!なんだ、このワン公は」 そう言って、いきなり子犬と遊び始めた。 父さんも母さんも、すっかり飼うつもりみたいだった。 それでも一応ボクが「この子犬をウチで飼わせて下さい」ってお願いして、散歩はボクがする約束で、飼うことに決まった。 心配することもなかったみたい。 実はその頃、ボクの家は間もなく引っ越しするって決まっていたんだ。 引っ越し先は、お祖母ちゃん――お母さんのお母さんだ――の家。今の家よりずっと庭が広いんだ。田舎だからね。 「一緒に住むようになっても、お昼の間お祖母ちゃんが一人で留守番するより安心だね」 「いい話し相手になってくれるかもしれないよ」 父さん、母さんはそんなことを言っていた。 子犬は薄茶色で、シッポがクルンと丸く巻いていて、ピロピロと振る様子がめちゃくちゃ可愛い。すぐになついて、家族の人気者になった。 名前はポチ。ポチ公って呼ぶことが多かった。名前を考えたのはボクだよ。 ボクが田口康平で、コイツは田口ポチだ。いい名前だろ?
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