28人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、この犬、飼ってもいい?」
家に帰ってそう聞くと、母さんは、
「そうねえ・・・・・・」としばらく考えていたけれど、
「父さんがいいって言ったらね」
そう言って、ボクが抱いていた子犬の頭を撫でていた。
会社から帰ってきた父さんは、
「お!なんだ、このワン公は」
そう言って、いきなり子犬と遊び始めた。
父さんも母さんも、すっかり飼うつもりみたいだった。
それでも一応ボクが「この子犬をウチで飼わせて下さい」ってお願いして、散歩はボクがする約束で、飼うことに決まった。
心配することもなかったみたい。
実はその頃、ボクの家は間もなく引っ越しするって決まっていたんだ。
引っ越し先は、お祖母ちゃん――お母さんのお母さんだ――の家。今の家よりずっと庭が広いんだ。田舎だからね。
「一緒に住むようになっても、お昼の間お祖母ちゃんが一人で留守番するより安心だね」
「いい話し相手になってくれるかもしれないよ」
父さん、母さんはそんなことを言っていた。
子犬は薄茶色で、シッポがクルンと丸く巻いていて、ピロピロと振る様子がめちゃくちゃ可愛い。すぐになついて、家族の人気者になった。
名前はポチ。ポチ公って呼ぶことが多かった。名前を考えたのはボクだよ。
ボクが田口康平で、コイツは田口ポチだ。いい名前だろ?
最初のコメントを投稿しよう!