色鉛筆の片想い

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「お待ちどおさま! はいどうぞ!」  結局何も言えないまま、僕は里帆から絵を受け取り、代金を支払った。 「ありがとうございました!」  彼女は僕に気づくことなく、爽やかな笑みを含んだ声を響かせる。  このまま別れていいのだろうか? 僕の中の里帆への想いはあの日からずっと変わらず息づいているというのに……。  いいわけないっ!  もう僕は中学生の頃の自分とは違う。青空を見上げ大きく深呼吸した。心臓が跳ねる。  この言葉をいつか言いたくて、この四年間、僕はずっと人として里帆の背中を追って来たんだ。   「里帆。大城だよ。ずっと好きだった」  すると彼女は驚いたような顔をしてクスリと笑う。 「大城くんだって気づいていたよ」  そうして僕のポートレートの隅を指さす。そこには青とピンクの色鉛筆がキスするように並んで小さく描かれていた。  その瞬間、世界があの日の里帆の点描画のように無数の色で躍動し光輝く。  色彩が踊るその世界の中で僕は今本当の意味で自分自身を愛することを知った。 Fin.
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