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「ああ、みんなごめんねー、ウチのナナが邪魔しちゃって。さ、帰るよ。すっかり遅くなっちゃった」
ママにリードを引かれながらも待合室を振り返ると、おばさんたちはまだこっちを向いて尻尾を振っていた。
「また散歩のついでに、ウチにも来なさいよ。アタシ二丁目だから」
「まあ、あんまり考えすぎないようにね」
「そうそう、元気で楽しく暮らすのがいちばんよ。だって私たちはみんな、オンリーわん!」
そう言うや、またおばさんたちはゲラゲラと笑い転げた。
——オンリーわん、か……。
私はママの横を歩きながら考えた。
おばさんのさっむいギャグは置いといて、確かにママは私にああしろこうしろって言わない。ただいつもごはんをくれて、遊んでくれて、私のためにスーパーの特売日をしっかりチェックして……
「もう一人で出てっちゃだめよ。ナナがいなくなっちゃったら、ママもパパもすっごく哀しいんだからね」
そう言うと、ママはくしゃっと私の頭を撫でた。そう、ただいつも撫でてくれるあったかい手。
ほんとう? ナナがいなくなったら、ママたちは哀しい?
ママたちが哀しいならナナも哀しい。
「ん? なに、ナナ」
立ち止まってママを見上げる私を見ると、ママは顔をくしゃりと綻ばせた。
「よし! たまには抱っこしよっか!」
「うん!」
ママが勢いよく私を抱き上げる。ああ、ママの抱っこなんて、久しぶり。
「うひゃあ、おっもーい! ナナ、大きくなったねえ」
えへへ、そうかな。
でもね、ナナね。
大きくなっても重くなっても、ずっとずっとママとパパの、このうちの子だからね。
いいよね、それで。
ね、ママ?
――ね?
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