キラキラじゃなくても

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お腹がいっぱいになった私は、お気に入りのクッションの上で眠くなるのをこらえながら、さっきの話をもう一度思い返した。 「進路かあ……確かにそろそろ決めなきゃいけないなあ」 サンちゃんみたいなアイドル路線は論外としても、この時代、やっぱり何か手に職つけないと。さっき咄嗟に口にした医療や介護っていうのも、あながち嘘じゃない。最近は「アニマルセラピー」なるものがあるらしい。病院や施設で長く暮らす人たちに、動物に触れてもらうことで気持ちを和らげてもらうんだって。 そういうのいいな、と思うけど、それなりに適性があるらしく。やっぱりおとなしくて人見知りしないタイプがいいのかな。でも私、あんまりコミュ力ある方じゃないし……。 憧れだけで言うのなら、本当は警察犬とか盲導犬みたいなのになりたい。でもこっちこそ、適性が問題だ。何より性格以上に、頭脳面で追いつかない気がする。だからさっきもサンちゃんには言わなかったのだ。そんなこと口にしようものなら「ナナちゃんがー!?」とか、思いっきり馬鹿にされそうだったし。 あーあ、警察犬とか麻薬探知犬なんてカッコいいし、公務員だから将来安泰なんだけどな。でもこれまで何も習わせてもらってない私じゃ、絶対無理に決まってる。 友達はみんなマナー講座やトレーニング教室でスキルアップしたり、中には競技会に出てる本格志向の子もいるっていうのに。このままだと、みんながいろんな分野で活躍してる隅っこで、自分だけ専業主犬になっちゃうかもしれない。 だんだん不安が頭の中でぐるぐると渦巻いてきた。 誰かに相談できるといいんだけど、お散歩で友達に会っても、ママが「ほら、行くわよ」とか言ってぐいぐいリードを引っ張るから、とてもじゃないけど腰を据えた相談なんて無理。勝手だよね、自分たちはどんなにこっちが退屈してたって、延々と立ち話してるくせに。
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