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「キュウさーーーん!」
匂いを頼りに何とかキュウさんの家に辿り着いた私は、門の外から大きな声で叫んだ。
玄関脇の茂みから、眠そうな顔のキュウさんがのっそりと姿を現す。
やば、お昼寝の邪魔しちゃったかな。
「おお、これは……あー……うむ、確か一丁目の……」
「はい、一丁目のナナです。佐々木ナナ、1歳半です!」
キュウさんは、ぽさりと尻尾をひと振りして、ほっほっと笑った。
「元気がいいのう。そうそう、一丁目のナナ、な。思い出したわ。まだ赤んぼの頃、川沿いの走り場で他の犬見て腰抜かして、ご主人の足許でぶるぶる丸まってチビり……」
「わわわわ、キュウさん、それは言わないでください! それに走り場って……今はドッグランって言うんですよ」
「ふむ、どっぐらん、な。聞いたことはあるが、どうにも横文字は苦手での。ところでナナよ、ご主人の姿が見えんようだが、どうしたことかね。我々家庭犬たるもの、ご主人なしの外歩きはご法度じゃぞ。下手すると鉄猪にぶつかられたり、怖い人間に連れ去られたら洒落にならんぞ」
「えーと、はい……あの、実はキュウさんにご相談があって……」
「相談?」
キュウさんは、立派な鼻をひくひくさせた。
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