【11】リラ

1/1
前へ
/20ページ
次へ

【11】リラ

――――ある日学園から帰ると……美女がいた。紫髪の美しい、竜角の女性が……何故かお団子を食べていた。この世界にお団子って……あるの!? それも驚きだが……。 「えっと……」 メイドさんとも違う気がする……と言うか、堂々とリビングの椅子に腰掛け寛いでいる時点で違うだろう。 「あの……」 「あれ、ひょっとして兄さん、初めて?」 一緒に帰邸したハヤトが首を傾げる。ツェリンも同じく……。 「あら、背中に乗せてあげたじゃない。忘れたの?リラよ!」 美女がそう告げる。ん……?リラ……? 「あの……竜の……」 でもモロドラゴンの姿をしていたはず……いや、彼女も竜角だが。 「そのヒト型よ。人間の甘味を食べる時はこっちの姿の方が食べやすいのよ」 まぁ確かにお団子は……竜の腕では大変そうだが。 「リラはヒト型の使用方法間違えてない?」 ハヤトが苦笑する。 「いいじゃないの。お団子美味しいし……あ、ピスィカも食べる?」 ふと、リラがお団子の串をとり、こちらに差し出してくる。 「い、いいの!?」 「もちろんよ」 にこりと微笑むリラからお団子をひと串受けとる。まさか本当に……お団子……! 「え、兄さん、それいけるの!?」 それはどういう意味だろうか……?しかし西洋ファンタジー風の文化のひとたちから見たら不思議なものなのだろうか? はむりと口に含めれば。 「んん、おいひぃ」 異世界に来て初のみたらし団子も……すごく美味しい……! 「それ、どんな味なの?」 「すっごいもちもちで、あまじょっぱくて美味しいよ」 「う~ん、よく分からないけど」 「ツェリンは甘いもの好きだし、いってみる?」 「ふえぇ……私ですか?」 「そうよ、あんたたちも食わず嫌いしないで」 リラがもう1本串をくれたので、メイドからフォークを借りて串から取り分けてあげる。 「ほら、ひとつずつなら」 ツェリンたちにフォークとともに差し出せば、2人ともどきどきしつつも口に含めてくれる。 「……初めての味」 「でもこのソース、とっても美味しいです……!」 「ほら、でしょう?」 リラがにこにこと微笑む。うん……お団子、おいひぃな……。もぐもぐ。 「リラ……?みんなで食べてるの……?……って、ピスィカがいつも以上に幸せそうにお団子を食べてる!」 ゼス兄さんがやって来て、何やら驚愕している……?そんなに普段と違うだろうか……?前世ぶりだからかなぁ……? 「よし、また買ってこよう。東方への遣いはこれからは楽しみが増えた……!」 東方……このお団子は東方で手に入るのか……。そしてゼス兄さんはリラと共に東方にお使いに行っているようである。そう言えば……たまに泊まりで留守にすることあるけど、それかな……? 「そうね!どうせならお味噌やお米も買って来ちゃう!?」 「味噌と……米……!」 こちらでもたまに米は出る。リゾットを学園の食堂で頼んだことはあるとはいえ……味噌汁とセットになった米は……絶対美味しいやつ……! 「え、興味あるの?ピスィカ。じゃぁ今度……」 「でも重いんじゃ……」 「大丈夫よ。番連れてって持たせるから」 まさかの荷物持ちに……番も……竜だよな!?いいのか!? 「はははははっ!ピスィカのためならもうひとりの竜騎士と一頭もオスカーが許可してくれそうー」 「その、いいの……?」 「もちろんじゃん!東方までは遠いからねぇ。かわいい弟がわくわくしながら待っててくれるなら、お兄ちゃんすっごく頑張れるよ~~」 うーん……ゼス兄さんのやる気に繋がるのなら……お互いウィンウィンなのかな……? そしてその後届いた米と味噌汁で和食を作って見せたら……めちゃくちゃ驚かれた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加