【14】探索魔法

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【14】探索魔法

学園長室を出れば既にツェリンの姿はない。 「どちらへ行ったんだ……」 「手分けしよう!見つけたら知らせて!」 「う……うん」 兄弟で手分けしてツェリンを探しに向かう。 その途中……ふと……。 庭園が目に入る。そう言えば……昔……魔法と知らずに使って探していたことがあった……。それを見たカロータが脅えていたから、あれはもしかしたら本当に魔法だったのかもしれない。魔法は日常の一部。日常の中でも何気なく使う。それがチェルナマチカと言う一族だとオスカー兄さんが言っていた。 それは暴走したことはなくとも、他が暴走したからこそ、それもやめてしまったのだ。 そして口も閉ざした。 「恐れちゃいけない……か」 昨日、スティファニーがそう言っていなかったか……。 今はとにかく……ツェリンを見つけてあげなきゃいけない。もしもツェリンにまで危険が迫ったら大変だ……! あの時は確か、木の実の名前を聞いて、探していたのだ。お祝いの時に食べられるその木の実を。もちろん俺は食べさせてもらえなかったけどね。 「……メッレ・ヴァジーナ・ツェリン・ルシアーナ」 風か方向を示してる。 行こう……! 脚を踏み出せば、まるで風が運ぶように脚が動く。そして視界の端にサーモンピンクの特徴的な髪色が目に入る。 「ツェリン……見付けた……!」 ツェリンは思ったよりも遠くには行っていなかったか。 「ピスィカ……どうして……」 「えっと……魔法で、探した」 「探索魔法みたいなものですか……?」 「よく……分からないけど……思い出したから」 ……そうだ。 「あの、ツェリン。この魔法でスティファニーも探せるかも……!」 これは名前だけで探せるのだ。しかしオスカー兄さんやハヤトは使っていない……?それは、何故……。 「けど……普通は魔方陣や、対価になるものを捧げて探すのです。お父さまもお抱えの魔法使いたちと共にやっているはずですがろ……掴めず終いで……それに探索対象が遠かったり、複雑な場所にいたり……あと、結界や隠とん術で姿を隠してるほどに対価と魔力使用量が膨大になります」 「……いや……特に使ってないけど……」 あ……だから兄さんたちはそれを使うよりも先に、探しに出たのか。 「……そんな……本当に……?」 ツェリンがひどく驚いたような表情を見せる。 「とにかく、まずはオスカー兄さんたちに迎えに来てもらおう」 確かステータス画面から信号を送れるんだもんね。手のひらを差し出し、ステータスと叫ぼうとした時、ぱしゅっと手首を掴まれる。え、誰……!? 「※※※ーー・ーー※・・ーーー」 その音階は酷く異質で、不快なものだった。 そしてそれと共に魔力が……沸き立ってこない……。 「ちょ……っ、何なんですかあなたたち!放しな……っ」 ツェリンが叫ぼうとした瞬間、ツェリンの口をその背後から現れた黒服の人物が塞ぐ。 「……あんたにしゃべられると一番厄介なんだよ」 黒服がそう呟く。どういうこと……? 「天下のチェルナマチカもこの程度とは」 そして俺の手首を掴む男が俺の顔に手のひらを被せてきた。 うそ……こんなところで……終わるの……? そして目の前が真っ暗になった。
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