【4】魔法学校。

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【4】魔法学校。

ゼスさんと共に書斎の奥のオスカーさんの元へと進めば、オスカーさんが立ち上がり俺の前に立つ。 えっと……その……。 「さて、君がピスィカだな。どうやら妙な魔法を使っているようだが」 妙な……魔法? その時。オスカーさんの手が伸びてきて、喉元にそっと触れた瞬間、何かが弾けた気がした。 「あぅ……っ、けほ……っ」 「あ、ピスィカ、声が……」 ゼスさんの言葉にピクンと身がこわばる。 「ほう……?声を封じていたのか」 「えー、ん~~、そうなのかも!」 ゼスさんは悩みながらもそう頷く。 「お前は分析やら解析やらがででダメだからな」 「やる前にぶっ壊した方が楽々~~!」 ちょ……っ。強引すぎないか……!?てか壊したらダメなものもあるだろうに。 「ピスィカ、何故喉を……声を封じていた?」 「……っ」 何故……そう言われても。 「恐らくは魔力のせいだろうが」 「……」 それは……多分、そうなのだろうな。魔力さえなければ、こんなことにはならなかっただろうし。 「チェルナマチカのことはゼスに聞いたか?」 こくん、と頷く。まだ知らないことの方が多いだろうが。 「チェルナマチカは元は小さな小国の王族。今の王国に編入されてからも魔法侯爵と言う特殊な立場にある。そして音階が特殊な言語を操る。それは独自の魔法の言語でもある。私たちにとっては魔法は生活の一部だったからこそ、日常の言語に魔法が含まれている。……ピスィカの暮らしていた地域は、チェルナマチカの言語の影響を少なからず受けている。恐らく知らずに発した言葉が魔法となってしまったのだろう。だが、しっかりと魔力をコントロールできればその危険はなくなる」 「そうそう、学校通えばコントロール方法も学べるし!」 オスカーさんに続いてゼスさんもうんうんと頷いてくれる。 「まだしゃべるのが恐ければ、それでいい。少しずつ話せるようになればいい」 「それに……俺たち相手なら、暴発しようが無意識に暴発しようが大丈夫だから~」 いや、それは危険なのでは……!?てかどっちも暴発だし……! 「我々は魔法使いの精鋭だ」 「そうそう。チェルナマチカって魔法使いの一族……元は王族だったもんねぇ。へっちゃら~~」 そう……なのか……?俺が知らなかっただけで……この声を恐れない……しゃべってもいいと言ってくれるひとがいる……。 「まぁ、とにかく!早速入学式だね~~」 え……入学式!? 「準備は任せる。私もそろそろ出立の準備をしないと」 オスカーさんの言葉にゼスさんが頷き、よく分からないうちに俺はシャワーに入れられ、そして高そうな服を着させられた。 ※※※ いや……こんな高そうな服を……。でも、言うとしても……まだ恐い。大丈夫と言われてもやっぱりな……。 「あ、もしかして……ピスィカ?」 馬車を用意してくると言うゼスさんをひとりで待っていれば。 不意に届いた声にはっとすれば……。 「わぁい!やっぱりそうだよね!魔力がチェルナマチカだもん。ぼくはハヤト・チェルナマチカ!チェルナマチカの五男……いや、ピスィカが来たからぼくが六男になるんだよねー。同い年だけどぼくの方が誕生月が遅いから……ね、兄さんって呼んでいい?」 は……?に、兄さん……!?しかも……なんかオスカーさん譲りの顔立ちの整った子だ。 「あの、ハヤトくん……!その方がピスィカ……くん?」 「そうそう」 続いて現れたのは女の子だ。この子も……同じくらいの年齢である。 「あ、彼女はチェルナマチカじゃないんだけど、ツェリン・ルシアーナ。実家で問題起こしてうちに謹慎中」 いや……謹慎ってそもそも実家で行うものでは……? 「問題って何ですか問題って!悪いのはあっちですから……!」 「あはははは。うるさいけど悪い子じゃない」 「うるさいとは何ですかうるさいとは。失礼な……!」 ハヤトとツェリンのやり取りを聞いていれば、ゼスさんが戻ってきた。 「馬車の準備できたよ~~!ハヤトとツェリンちゃんもいるね。オスカーは入学式の準備で魔法で先に行ったから、君たちは馬車で行こうか~~」 「ぼくも魔法で行けるんだけど……」 と、ハヤト。え、何それ転移魔法ってやつ?それとも空を飛ぶのだろうか。 「入学式は、新入生が魔法で転移するのは禁止~~。転移ポートを使うならともかく。だからお兄ちゃん空飛んでいったらオスカーにまーじで怒られたぁ~~」 「うん、ゼス兄さんがやってないわけないと思ってた」 「えー、何でバレてるのー?」 ゼスさんは笑いながらも俺たちを馬車の中に案内して、自ら馭者台に……? ゼスさんが馬車の馭者って……!? 「ゼス兄さん、貴族なのにいろいろ変わってるでしょ?貴族っぽくじっとしてるの苦手なひとだから」 ハヤトが苦笑する。 うん、行動派なのは……何となく分かるかも……。 「あ……そう言えば……ピスィカ兄さん、無口だね」 「……っ」 えと……その……どうしよう。ハヤトもチェルナマチカ……なんだよね。オスカーさんとゼスさんの弟だもの……。でも俺のこの声の件は……どう伝えたらいいのだろうか。 でも何かしゃべらないと嫌な気分にさせるだろうか……。だけど俺がしゃべった方が周りを嫌な気分にするのだ。 いつも、そうだった。それに今はチェルナマチカではないツェリンもいるのだ。 「ツェリンがうるさい分均衡とれるね!」 ……へ?ハヤトは全く気にしていない……? 「し、失礼な――――――……っ!」 ツェリンはぷんすかしていたが……。 ※※※ 魔法学校と言う場所に……到着した。何だかお城みたいなのだが……これが校舎? 「じゃ、お兄ちゃんは終わった頃に迎えに来るから~~」 俺たちをおろしたゼスさんは……馬車を動かして帰ってしまったのだが……これからどうすれば。 「じゃぁピスィカ兄さん、行こうか。あれが入学式会場。校舎は別にあるんだってー」 俺の手を引っ張って先導していくハヤトの言葉に驚愕する。え……校舎は別……!? 「ウチの方が広いけど、魔法学校も相当広いよ。学生証をもらえれば転移しようが飛ぼうが自由なんだけど」 「転移ポートもありますよね。私は誰かに送ってもらわないと使えないので、ひとりの時は転移ポートを使う予定です!ピスィカくんも使います?」 ツェリンの言葉にこくんと頷く。俺も……どうやって使うのか、まるで分からないし……。 「でもぼくがいる時は平気だって。一緒に連れていくからね……!」 それはその……お言葉に甘えてもいいのだろうか。 「それと、入学式の前にあそこで学生証もらおっか」 「そう言えば……そうでした!」 入学式会場の前には、係員のような人々がおり、同じ学生らしき少年少女の受付をしているようだ。 「あ、ハヤト……こっち」 そんな中、ハヤトを呼ぶ声に、ハヤトにおいでと言われてついて行けば。 「……ピスィカ?」 その青年は俺たちより少し年上と思われるのだが。その……俺の名前を知ってるの……? 「あぁ、ピスィカ兄さん。このネクラっぽいのが四男のフェリクス・チェルナマチカ。フェル兄さんでいいよ」 い、いいよって……てか、この人も異母兄!? 「うん……フェルでいい」 しかしフェルさんもそう言うのなら……。 「フェル兄さんは上級生なんだっ!」 「ん……」 フェルさんもあまり口数が多くない……いや、ほぼしゃべれない俺が言うのもなんだが……。 「学生証の手続き、しよ」 そうフェルさんが告げれば、早速係員の元まで案内してくれた。 「じゃ、ステータスだして」 え……? ツェリンとハヤトが『ステータス』と告げて、半透明なモニターを呼び出していたのだが……。どうしよう……俺……ステータス開示、できないんだ……。 「ピスィカ、ステータスは?」 フェルさんの言葉にふるふると首を振れば。 「え……神殿での洗礼は?」 フェルさんの言葉にふるふると首を振る。やはり……その、洗礼も受けてない俺が……こんな場所にくるのは分不相応だったであろうか……。
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