神は僕を見捨てていなかった

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神は僕を見捨てていなかった

「久しぶり。」 僕が寂しく一人で下校してると、突然背後からそんな声が聞こえた。びっくりして僕が振り返ると、一人の女子がこっちを見て微笑んでた。 (えぇっと確か今日転校してきた…) 「みずぬま…さん?」 「そーだよ!」 (僕は彼女とは別クラスだ。きっと誰かと間違えてるのだろう。それにしても…)僕は彼女のほうを改めて、まじまじと見た。風になびいて光る黒髪、雪のように白い肌、ぱっちりとしてかつ少し切れ長で、優しくも凛々しい目、そして淡く赤い艶やかな唇。(噂通りだ。彼女は絶世の美女だ…)僕は唾をのんだ。 「どーしたの??そんなじろじろと私を見てー。」 彼女は僕の顔を覗き込んで、ちょっぴり恥ずかしそうに、にこっと笑った。 「どっ!えっ‼いやっあのっ、えと、なんで始めましての僕に話しかけたのかなーって‼もしかして人違いじゃない!?」 (う、うわあああああ顔近いいいい良い匂いする‼)僕が彼女の美貌に面食らっていると、彼女…いや、水沼さんは少し遠くの方を見て 「…別にいいじゃん?君がそこにいたから話しかけただけ!そー言えば君、なんて名前なの?」と言った。 「な、名前!?僕の⁉えぇっと、僕の名前は三神(みかみ) 沙羅(さら)…あっ!さらって名前だけど女の子じゃないから‼」 (あっ。また言っちゃった。毎回名前を聞かれると言ってしまう。男なのぐらい見たらわかるだろ。だから変わってるって言われるんだよ…。ほら、彼女だってすごい顔してるじゃないか‼昔名前でいじめられてたからって…っえ)全く身に覚えのない記憶が脳裏をよぎった気がした。(あれっ、僕っていじめられてたっけ…?いじめられていたようなそうじゃないような…うーん昔の記憶が凄く曖昧だ!どんだけバカなんだ僕は!)僕は自分の頭をぺしぺしと叩いた。 「やっぱりだ」 「っっ!えっ?」 (しまった!水沼さんと話してる途中だった!!あとちょっとで自分の世界から出れなくなるとこだった。危ない危ない。) 僕は深呼吸して彼女を見る。彼女は眉をひそめ、なにやらぼそぼそつぶやいている。(ど。どうしよ…)僕は勇気を振り絞って話しかけた。 「あ、あのっ!」 「えっ?」 「えと、あの、やっぱりって何がやっぱr」 僕が言い終える前に彼女が口を動かした。 「やっぱり。三神君って面白いなっって‼」 「えっ?面白いですか…?」 「めっちゃ面白い‼また帰り一緒に帰っていい?」 「僕なんかでいいなら…」 「じゃあ決まり‼私んちこっちだから!じゃ!またね‼」 「じゃ、じゃあ…」 僕がそういうと彼女は満面の笑みで僕に大きく手を振って、僕と逆の道に歩き出した。 「………モテ期……?」 僕はその日ずっと彼女のことしか考えられず、夜も眠れなかった。
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