コールドスリープ

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***  それからかなりの時間が経った。2070年になったこの世界では、景色は全く変わらない。ただ少しだけ、近未来感が増した気がする。相変わらずコールドスリープは利用されているし、最近では治療薬が開発され、ついに最初の利用者が眠りから目が覚めたというニュースが報道されていた。他にも、利用していた人たちが治療薬を摂取するために、目を次々と覚ましていた。 「お母さん、おはよう」  母の目は未だに覚めていない。ずっと、装置の中で眠ったままだ。母は眠ったまま時が止まっていて、私や周りの世界の時だけが刻々と進んでいく。そこだけ、まるで別世界のようだった。  でも、これは覚悟の上での結果だ。だから私は母の為にも頑張らないといけない。いつか母が目覚めて、傍にいてあげるためにも。母と共に「おはよう」と交わせるその日まで、私は母を待ち続ける。その為にも、今日も頑張ろう。 「ばぁば、おはよー」  私の隣で小さな生命が母に向かってそう言う。その隣ではワンっ!と元気な鳴き声が聞こえてきた。  お母さん、新しい家族だよ。いつか紹介したいな。いつまでも待ってるから。だから早く目を覚ましてね。私も頑張ってお薬開発するからさ。  目を覚ましたら一緒にジョーのお墓にお参りしに行こう。私の新しい家族と一緒に。
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