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出現
***
私、矢見千鶴は16歳の高校1年生で、両親と二つ上の姉を家族に持つ、ごくごく普通の女子高生だ。
物腰柔らかで、滅多に怒ることのない母。街ゆく人を観察すれば、十人は似た人を見つけられるほど特徴のない父。現在海外留学に行っている優秀な姉。
私はと言えば、あまりにも平々凡々としていて、明るいところが唯一の取り柄といった感じだ。賢さとか勉強の上手さは、姉に全振りされたらしい。
しかしそれを引け目に感じることもなく、私は持ち前の呑気さでのほほんと暮らしていた。姉に嫉妬心を抱いたことも、本当に一度だってないのだ。
あいつが初めて出現したのは、クリスマスが明けてから——ちょうど26日の朝だった。
自分のうめき声で目が覚めたことを憶えている。内容は目覚めと共に忘れたが、何か悪夢でも見ていたのだろう。時計を見ると、朝の4時だった。
とりあえずトイレに行っておいて、そこから二度寝するか……そう思って立ち上がり、部屋のドアに手をかけた時だった。
——動くな。
聞き覚えのない男性の声が響いた。
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