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——まだ信じられないって感じだな。まあ無理もないか。
「あんたは……あんたは一体誰なの? 何で私の中にいるの?」
——俺に名前はない。つけてくれてもいいぞ。何でって言われても……それはまあ生まれちまったから、としか。
「生まれた?」
——ああ。ざっくり言うと、俺はお前のもう一つの人格で、お前は二重人格者なんだよ。
「二重人格……? 私が?」
——そ。というわけでよろしくな。
急にそんなことを言われても、頭が全然ついていかない。私が二重人格? 今脳内に語りかけている男は、私の精神から分裂したもう一つの人格で……。
そこまで考えたところで、部屋の温度が低いことを思い出す。
「冬の朝寒すぎ……とりあえず着替えないと……」
しかし、私は指先すら動かせなかった。自分の体が自分の思い通りにいかない感覚。こんな状態に陥ることは初めてで、ドッと嫌な汗が湧き出てくる。
「ちょっと……これあんたがやってるの? もしそうなら、早くやめて」
口調に焦りが滲む。嫌な予感がしていた。それが外れますように、と願いながら彼に言う。
しかしあいつは、冷たく言い放った。
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