同級生の男子

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 悲しみはあの男への恨みに変わり、私を焦がす。  一度悲しみに呑み込まれ、自殺を考えたこともあったが、風呂場でカミソリを脈に当て、いよいよ死のうとした瞬間に、あいつがベラベラと捲し立てたのだ。  ——お前なんかが死んだところで、両親はそこまで悲しまないだろうな。優秀なお姉ちゃんと違って、何の取り柄もないしな。二人も心の底では馬鹿にしてんじゃね? 同じ腹から出てきたとは思えない馬鹿な子供だって。  カッと頭に血が昇る。  「私の家族は、そんなんじゃない!」  風呂場に声がよく響いた。両親は私のことを愛してくれていた。絶対に。姉妹で注ぐ愛情の量を変える人間などではない。そんな最低な親では断じてない。  家族を悪し様に言われて、久方ぶりに大きな声が出た。風呂場での行為が始まってから、ずっと虫の鳴くような声しか出なかったので、まだこんなエネルギーが残っていたのかと驚いた。  私のことを悪く言うのは許せる。だけど私の大切な人たちまで貶められるのは、我慢ならない。  ——まあお前は今後家庭を持てないだろうし、せいぜい今の家族を大事にしなよ。  プツンと頭の中で何かが切れた。
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