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お前は今後家庭を持てない——それはつまりお前は生涯結婚できねーよ、と言っているのだ。
俺が結婚させないからな、という宣言なのか。人並みの幸せなど許さない、と。
あるいは、お前はもう誰かと愛し合うことなどできない心身だろうが、と嘲弄しているのかもしれない。
確かに私の体は汚いかもしれない。心にも深い傷が刻まれて、好きになった人とそういう行為をする、となった時、恐怖心から拒否してしまうかもしれない。
それでも幸せになりたい。
こいつから解放されるには、自分ごと死ぬしかないのだと思っていた。
しかし、こんな奴のために私が死ななければいけないのはおかしい。
私はこれ以上不幸にならなくていい。
この男を殺す手段を考えよう。私が命を断つ以外の方法を探そう。
そうして必ず幸せな恋愛をするんだ。幸福になってやるんだ。
俄然やる気が湧いてきて、カミソリを置き立ち上がる。
風呂場を出ると同時に、あいつの気配が消えた。
脈に刃を当てた時、あいつは急に饒舌になった。焦ると悪態に拍車がかかるらしい。
そりゃ焦るか。私が死ぬ=自分も消えるってことなんだから。
あれから今日まで、あいつを殺すのに有効な策は見つかっていない。
せめて心意気だけは失わないようにしよう、と思うのだが、それもいつまで続くか……。
私の心はあいつに犯されるたびに、着実に壊れていっている。
いつまで正気を保っていられるだろうか……。
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