同級生の男子

7/7
前へ
/333ページ
次へ
 これは勝手な憶測でしかないが、彼が不登校になった原因は虐めではないかと思う。  だって若林君がどんな人だったかなんて、クラスのほとんどが知らない。教室の隅で一人スマホをいじっていた姿しか記憶にないのだ。  笑った顔を一度も見たことがなく、誰とも関わらない関わろうとしない——まあハッキリ言って、根暗な男の子だった。  さっきだって、私と目を合わせようとすらせず、皺一つないスラックスをやたらと撫で付けていた。  人付き合いが極端に苦手な生徒は、それだけで一部の生徒から反感を買い、迫害される理由となり得るのだ。  若林君も、見えないところでからかわれたり、暴言を吐かれたりされていたのかもしれない。  ——おい時間やばいんじゃねーの?  ちょうどそのタイミングで、予鈴が鳴る。  ——頑張れ頑張れ。  急いで校門に向かいダッシュすると、親しげな調子で激励された。  友達同士のようなその口調に、鳥肌が立つ。馴れ馴れしくすんな、と殺意がこみ上げる。  そのうち私も不登校になっちゃいそうだわ。こいつのせいで精神を病みすぎて。  でも私が正気を保っていられるのは、学校のおかげだと思う。こいつは基本的に昼間には来ないし、友達と過ごす時間も癒しになっている。  それにしても——。  こいつは、いつまでいるつもりなんだろう?  この男が私の元を訪ねるのは、決まって夜。あの下劣な行為をする時に限っている。  例外として、初めて出現した時と自殺を止めた時があるが、それ以外でこいつが明るい時間に現れたことはない。  何もやらかさないといいが——。  戦々恐々としながら、私は校門をくぐった。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加