31人が本棚に入れています
本棚に追加
これは勝手な憶測でしかないが、彼が不登校になった原因は虐めではないかと思う。
だって若林君がどんな人だったかなんて、クラスのほとんどが知らない。教室の隅で一人スマホをいじっていた姿しか記憶にないのだ。
笑った顔を一度も見たことがなく、誰とも関わらない関わろうとしない——まあハッキリ言って、根暗な男の子だった。
さっきだって、私と目を合わせようとすらせず、皺一つないスラックスをやたらと撫で付けていた。
人付き合いが極端に苦手な生徒は、それだけで一部の生徒から反感を買い、迫害される理由となり得るのだ。
若林君も、見えないところでからかわれたり、暴言を吐かれたりされていたのかもしれない。
——おい時間やばいんじゃねーの?
ちょうどそのタイミングで、予鈴が鳴る。
——頑張れ頑張れ。
急いで校門に向かいダッシュすると、親しげな調子で激励された。
友達同士のようなその口調に、鳥肌が立つ。馴れ馴れしくすんな、と殺意がこみ上げる。
そのうち私も不登校になっちゃいそうだわ。こいつのせいで精神を病みすぎて。
でも私が正気を保っていられるのは、学校のおかげだと思う。こいつは基本的に昼間には来ないし、友達と過ごす時間も癒しになっている。
それにしても——。
こいつは、いつまでいるつもりなんだろう?
この男が私の元を訪ねるのは、決まって夜。あの下劣な行為をする時に限っている。
例外として、初めて出現した時と自殺を止めた時があるが、それ以外でこいつが明るい時間に現れたことはない。
何もやらかさないといいが——。
戦々恐々としながら、私は校門をくぐった。
最初のコメントを投稿しよう!