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私たちは、図書室に来ていた。校舎の外れという目立たないところにあるせいか、ここを訪れる生徒は極めて少ない。昼休みなら冷やかしに来る生徒もまばらなのだけど、わざわざ放課後に図書室に来る奇特な人物は皆無だった。勉強がしたいなら家ですれば良いし、そもそも学習塾に通っている生徒が多いだろう。
そんな過疎化が激しい場所なので、当番の図書委員も仕事をするのが馬鹿らしいようで、この時間帯の図書室は、文字通り人っ子1人いなかった。
静まり返った空間に、あまり話したことがないクラスメイトと二人きりというシチュエーションに、少し緊張してくる。
すると、若林君が遠慮がちに切り出した。
「あの、さ。矢見さん。おかしなこと聞くんだけど……最近肩が重かったりしない? あ、あと体が怠かったり、何となく元気が出ない日が続いたり……とか。そういうの」
「え?」
変化球を投げられて、唖然とする。
若林君の意図がわからない。何で私の体調なんかが気になるんだ?
胡乱な視線に気づいたのだろう。若林君はあわあわと手を振って、付け加える。
「あ、別に変な意味はないんだ。ただ純粋に心配だから聞いてるだけで……」
弁解の言葉は、不信感を拭うどころか、さらに塗りたくる結果になっている。
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