謎の男

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 浴室に入ると同時に、行為は始まる。誰にも許したことのない穴に指を入れられ、中を隈なく巡回される。そのいやらしい手つきに、いつも吐き気が込み上げる。何度されてもこの感触には慣れない。こいつもこいつでよく飽きないな。ただ粘膜を探ることに、どうしてそんなに興奮するのだろう。  男がズボンを脱がせる。その動作はいやにゆったりとしていて、恐怖心を煽っているようだった。遅かろうが早かろうが、結果は変わらないんだから、いっそ一思いにガッとやってほしい。この地獄を早く終わらせられるのなら、体が裂けるような痛みだって耐えてみせる。浴室が血まみれになってもかまわない。  なのにこいつは、毎度毎度慎重に事を進める。私の苦悶を楽しむかのように。  下着も脱がされ、下半身は何もつけていない状態となった。まとっていたぬくもりを失った肌が泡立ち、寒気を訴える。
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