謎の男

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 「っ……んぅ」  鼻にかかる声が自然と出る。自分の口からそんな声が出ることにも、いつまでたっても慣れない。この甘ったるい声を聞くたびに、鼻の奥がツンとなる。  次第に股からトロリと粘着質な液体が出てきて、死にたくなった。  男は濡れたあそこを指でなぞる。くちゅ、という水音がして、また死にたくなった。  指が中に入ってくる。  自分がとんでもなく汚らしい存在になってしまった気がして、嫌悪感に苛まれる日々。こんなんじゃ、いつか大切な人ができて結ばれる、となった時にも、この記憶が邪魔して喜べない。  そもそも、まともな恋愛ができるんだろうか。  穢れ切った私に、いまさら普通の恋愛なんて望めるんだろうか。
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