謎の男

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 もっとも、見ないでも大体予想がつく。  一瞬、想像してしまった締まりのない自身の顔に、キュッと唇を噛み締める。  あいつは苦しんでいる私を見て、ニヤニヤしているはずだ。  いや、あの男に顔なんてものは存在しないわけだけど。  指がふやけてきた頃になって、ようやく解放される。  やっと終わった——と湧いてきた安らぎの感情は、あっという間に消え失せる。明日も同じことが繰り返されるだけだ。終わりなんかじゃない。  毎晩この時間が訪れるたびに、人間としての尊厳をめちゃくちゃに踏み躙られた気分になる。  「はぁっ……はぁっ……もう嫌……やめてよ……ほんとにっ……こんなこと……」  グッタリと浴槽のへりに手を添えて、息も絶え絶えにうめく。  瞬間、あいつの声が脳内に響く。
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