謎の男

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 さっきまでの自分の醜態を思い出して、胸が苦しくなる。  一度我慢の限界が来て、家族に助けを求めようとしたこともあった。  でも、自分がどんな目に遭っているのか、何をされているのか。いざ説明しようとすると、言葉が喉に張り付いて出てこない。  どうせ治ることのない病気なんだ……そう思うと、他人に話す気には到底なれなかった。それに私のような状態は、調べてみたところ前例にないのだ。となれば、医学界で好奇の目で見られ、研究対象として大勢の人に注目されるかもしれない——。これが私が最も懸念していることだった。  散々恥をかいた末に成果ゼロ、なんて心が耐えられない。  それこそ自殺してしまう。  他人にされていることを打ち明けるくらいなら、死んだ方がマシ。それが私の意思だった。  合意の上でない相手に体の自由を奪われて、劣情をぶつけられる。これが強姦じゃないなら、何なのだろう。
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