35

1/1
749人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ

35

 …あ…っ  ふわ…って…した…  薄く目を開けたら、至近距離でりっくんと目が合った。熱く潤んだ目が僕を見ている。少しでも身動(みじろ)げばまた唇が触れる、そんな距離。  キス…した… りっくんと…  すごく優しい、マシュマロみたいな柔らかな感触。 「空…」  僕の名前を呼ぶりっくんの唇の動きと息遣いを、唇で感じる。  堪らず目を閉じた。    りっくんが、ふふって笑った吐息が唇を撫でていって、再び唇が重なった。  さっきは触れるだけだったけど、今度は啄むように吸われて、ちゅって音を立てて唇を離された。そしてまたすぐ唇を塞がれる。    息ができない。でもやめてほしくない。 「…空、だいじょぶ? 息してる?」  りっくんの言葉と熱い息が唇にかかる。  わかんない わかんない  息ってどうするんだっけ?  涙目になってシャツにしがみつく僕の顎を、りっくんの親指がクイッと押し下げた。唇が開いて、やっと息が吸えた。 「…やっばい、かわいー…っ。ちょっ、ごめんムリ…っ」  りっくんの大きくて熱い手のひらが、僕の顔を両側から包んだ。  耳に指が触れてぞわっとする。りっくんが僕の唇をぺろりと舐めた。  驚いて開いた唇に舌を入れられる。  口の中舐められてる…っ  唇の内側や口角を舐められて唇を吸われる。りっくんの柔らかい唇が、舌が、何か甘いものを舐めるみたいに僕の唇に触れ続けてる。  …キス…キス…ってこんな…っ  舐められて溶けていく。唇も、頭の中も溶けてしまう。  歯列をなぞった舌がさらに内側へ。舌で舌を舐められる、ざらりとした感触が身体の奥の熱を煽る。  膝がカクカクと震えてしまって、もう立っていられない。  頬を包んでいた手が背中に回って僕を支えてくれた。その腕に身体を預けて、必死でりっくんに付いていく。  ついて…いけてる…?  りっくんの唇や舌の動きに合わせて、唇や舌をぎこちなく動かす。  触れ合ってるりっくんの唇が笑った。  ちゅっちゅって何度も小さなキスを繰り返して、ようやく唇を離した。  息を切らしてりっくんと見つめ合う。  思いっきり抱きしめて抱きしめられて、幸せすぎて苦しい。 「…空、ごめん、ちょっと抑え効かなかった。お前初めてなのに…」  初めてだから、何がごめんなのかも分からない。それより… 「…りっくん、ぼく、できてた…?」  あれ? なんかちゃんと喋れない。  舌、溶かされちゃったのかな、りっくんに…。 「で…っきてた…っつか、も、やばいやばい…っ、ちょっ待って…っっ」  僕の首筋に顔を埋めたりっくんが「うっわー」って言いながら僕をぎゅうぎゅう抱きしめた。首にかかる息が熱くてぞくぞくする。 「…っくん…?」 「ごめ…、もちょっと待って…。もぉまじでやばい…っ」  りっくんの焦った声にドキドキが止まらない。 「ぼく…へんなこと…、いった…?」  はあぁーっていう深い深いため息をついたりっくんが、やっと顔を上げた。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!