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火曜日の夜にりっくん家のコンビニに行ったら、りっくんに「危ないから、夜1人で出歩くんじゃないよ」って叱られた。レジで会計をしながら「めっ」って感じで睨まれて「ごめんなさい」って言いながら面映かった。
「家に着いたらメッセージ入れること。いいね?」
ミントタブレットにテープを貼って渡してくれながら、りっくんが僕をじっと見て言った。他にお客さんは雑誌の立ち読みをしてるおじさんと、ATMにお姉さん。
「はい。します」
「絶対だぞ? …ほんっと、顔見れんのは嬉しーけど心配がデカすぎる…」
りっくんが、ふぅってため息をついた。
「空は可愛いんだからさ、マジで気を付けて帰れよ?」
心配、と言う文字が張り付いているような顔をして、でもりっくんはすごく格好いい。
この格好いいりっくんを『りっくん』って呼んでいいのは、僕だけ。
「うん。急いで、気を付けて帰るね」
誇らしいような気持ちでバイバイって手を振ってコンビニを出て、速足で帰った。玄関に入ってすぐに「帰りました」ってりっくんにメッセージを送った。ほどなくして、りっくんから「了解」っていうスタンプが届いた。
ーーー心配かけてごめんなさい。でもどうしてもりっくんに会いたかったから。
さっき言えなかったことを、メッセージで送った。
ーー俺もおんなじ。いつだって空に会いたいよ。
きゅんとして画面を見つめて固まってしまった。
でも玄関でスマホ見て固まってるのはおかしい。
早く部屋入ろう。
リビングを通ったら、父と母が雑誌を広げて旅行の話をしていた。
「あ、空、おかえり。空は向こうで何が食べたい?」
ここはちゃんと楽しみにしてるようにしとかないと。
「えっと、ほら、瓶に入ったプリンあったよね。あれ食べたい」
「うん、載ってる載ってる。これでしょ? 美味しそうよね」
「お父さんは寿司が食べたいなぁ。海だし」
ポケットの中で、またスマホが震えた。
りっくんかな?
早く見たい。でもここでは見られない。
だって、りっくんのメッセージを見た時にどんな反応しちゃうか、自分でも分かんないから。
「海鮮が有名だけど、お肉の美味しいお店もいっぱいあるみたいよ。やっぱり空はお肉がいい?」
「あ、うん、どっちも」
危うく「どっちでも」って言いそうになった。「で」が入ると途端に気のない返事になってしまう。「あら、気乗りしないの? なんで?」なんていう展開は避けたい。
雑誌をめくりながら、ひとしきり旅行の話をして、ようやく自室に戻れた。
ドアを閉めながらポケットからスマホを出す。
やっぱりりっくんからだ。
ーーうるさく言ってごめんな。でも心配なんだよ。
さっきのコンビニでのりっくんの顔を思い出した。
一応僕も男だから、夜少し出かけるくらい母ももう表面上はそんな心配気な顔はしない。前に母が父に「空ももう大きいんだから、心配心配言うのもよくない」って言われてるのをドアの外から聞いた。だから、こんなストレートに心配されたり、叱られたのは久しぶりで気恥ずかしい。
…それに、…なんかすごい嬉しい
好きな人に心配されるのは、親にされるのと全然違う。
もちろん両親のことは好きだけど、でも親に言われたら「分かってるよ」って思うことも、りっくんに言われたら胸が熱くなる。こんなに僕のことを想ってくれてるって思って嬉しくなってしまう。
…もっと、心配してほしくなる
もっともっと、僕のことだけ考えてほしくなる。
僕が、りっくんのことばっかり考えてるみたいに。
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