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「そうよね、私がお父さんと付き合い始めたのと同じ年だもんね、空。恋人ができても、おかしくない年になったわね」  …恋人…っ  母がまた、ふふっと笑って僕を見た。 「私たちの可愛い空を、大事大事にしてくれる人と付き合ってほしいなぁ。もちろん、空が大好きな人でね。ね、お父さん」 「うんうん、それはそうなんだけど、酔ってるな、お母さん」 「だってせっかく片付け物とかないんだもん。呑まなきゃ」  えへへってお父さんに笑いかけたお母さんが、なんか可愛かった。  …僕を大事にしてくれる、僕が大好きな人…。  その条件に、りっくんはぴったり当てはまってる…けど。  でも、わざわざ言わない前提条件が、やっぱりあるんだろうな、って思った。  ホテルに戻って、今日は僕が1番にお風呂に入った。  今日もお風呂の前にりっくんに写真を送った。  さっきの、りっくんからのメッセージが目に入った。 ーーお前が、綺麗だなって。  …返事、できなかった。何て送ったらいいか、分かんなかった。  だから素知らぬ顔をして、また夕食の写真を送った。  お風呂に入ってる間にりっくんから返事がきてた。 ーーお、今日は寿司かー。いいね。  あ、普通に返事くれてる。うれしい。  …でも、ちょっと物足りない。 「あー、空。昨日と浴衣違う柄ー。え、みんな違うの?」  母が僕の浴衣を指差して言った。 「え、分かんない。適当に取っちゃった」  ていうか言われるまで昨日と違うの、気付いてなかった。 「今日のも可愛い! 似合う! また写真撮ったげる。こっちおいで」 「お母さんは空がいくつになっても可愛い可愛い言うなぁ」  父が笑いながら言った。いつの間にかビール買って来てる。 「だって可愛いもん。最近ますます可愛くなったと思うの」  パシャパシャと写真を撮って、また僕のスマホに送ってくれた。 「ほら、可愛いでしょ? 全部可愛いけど、お母さんは3枚目が1番可愛いと思う。ちょっと上目遣いで」  お母さんのスマホをお父さんがどれどれって覗いてる。 「あー、そうだなぁ。まあ、男が可愛くてどうする、って時代でもないしなぁ。ほぼお母さんの若い頃の顔だな、空は」  お母さんも可愛かったからなー、しょーがないなーって言いながら、父はまたビールを呑んでた。…お父さんも酔ってるし。  夫婦の惚気を聞かされてしまった。 「…髪乾かしてくる」 「私お風呂入ってくるー。今日はお父さん最後ね、まだ呑んでるし」  父が母に「ゆっくり入っておいで」って言ってるのを聞きながら洗面所に向かった。  写真のフォルダをスライドして昨日の浴衣の写真を見てみたら、確かに違う柄だった。お母さんすごい。  …これ、送っちゃう? りっくんに。  昨夜は、自意識過剰な気がしてやめた、けど。  何て言うだろう、りっくん。  唇を噛んで、じっと写真を見た。フォルダをスライドして今日のも見る。  …送っちゃおう。 ーーー昨日の。  のメッセージと、昨日の浴衣の写真。それから、 ーーー今日の。  というメッセージと今日の浴衣の写真を送って、 ーーーりっくんの写真も送って?  ってメッセージを送った。送ってから、ドキドキ、ドキドキと胸が鳴り始めて、息も苦しくなってくる。  か、髪、乾かそ…。  ドライヤーをかけていると、途中で父がトイレに来て慌ててスマホをタオルの下に隠した。 「空、お父さんコンビニ行ってくるから。地ビールが予想以上に旨かったから買い足してくる。空は何か欲しいものあるかい?」  トイレから出て手を洗いながら父が言った。 「じゃあ、何かご当地お菓子」 「分かった。お母さん鼻歌歌ってるからたぶん後30分は出てこないと思うけど、出たら言っといて」 「はーい」  父が洗面所から出て行ってから、スマホをまたチェックした。 ーーごめん、空。ビデオ通話できない?  えっ
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