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 りっくんのお土産にプリンを買うって、1日目の夜には決めてた。  賞味期限が短いから、すぐ渡さないといけない。  だから、帰ったらすぐりっくん家に行ける。  りっくんが甘いものが好きかどうかは知らないけど、そんな理由でお土産を決めた。「甘いものはイマイチ」って聞いちゃったら買って行けなくなっちゃうから、あえて好みは訊かなかった。  知らなくて良かったってこともあるんだな。  お土産を買ったらすぐにでも帰りたいぐらいだったけど、頑張って楽しんでるふりをした。とりあえず写真を撮って、口角を上げて。  昼食に、少し早めの時間にレストランに入ったけど、もう数時間でりっくんに会えると思ったら胸いっぱいで、全然食べられる気がしなかった。 「僕パフェにする」 「お昼ご飯パフェにするの?」 「だってほら、すごい美味しそうでしょ? フルーツいっぱいで」  母は最初微妙な顔をしてたけど、「まいっか」って笑った。    両親は旅の終わりを噛みしめるようにゆっくりと昼食を摂っていて、僕は逸る気持ちを宥めながら長いスプーンでクリームをすくった。  母がテーブルの向こう側から微笑みながら僕にスマホを向ける。 「パフェ食べてるところって、たいていどう撮っても可愛いわよね」 「パフェが可愛いからね」 「ね、空。そのサクランボ、指で摘んであーんってして」  あー可愛いって言いながら、母がシャッターを切った。  その写真をテーブルの下でりっくんに送った。  今日はまだりっくんから返事がない、っていうか既読も付かない。  まだ寝てるのかな。お休みだし。  ずっとバイトだったもんね。ゴールデンウィークなのに。  特に予定もなさそうに言ってたし。 『何しよっかなぁ。空いないし』  つまんなそうに言ってたの、嬉しかった。  昼食が終わって車に乗った時、ポケットでスマホが震えた。 ーーおはよう。起きたら可愛い空が可愛いパフェ食ってる。いい目覚めー。  やっぱ寝てたんだ、りっくん。 ーー返事遅くなってごめんな。昨夜寝られなかったから、こんな時間になった。  謝んなくていいのに。 ーーー全然いいよ。お休みだもん。 ーーどう? 渋滞。車流れてる? ーーー今のところ大丈夫。順調。     車はそれなりのスピードで走ってる。今日は母が好きなCDをかけた。 「空、スマホばっかり見てたら車酔いするぞ」 「えっ、あ…うん」  バックミラーの中で父と目が合った。  やばい。僕、にやにやしてたかも。  車窓を眺めるふりをして、顔を背けた。  休憩で寄ったサービスエリアは結構混んできていた。母がトイレから戻ってこないと思ったらソフトクリームを買ってきてた。 「サービスエリアに来るとソフトクリーム食べたくなるのよね」 「ちょっとずつ味が違って美味しいんだよね」 「サッパリ系からこってり濃厚までな。お父さんはサッパリ系が好きだなぁ」  ソフトクリームを食べながらそんな話をして、「さあもうひと頑張り!」と父がハンドルを握った。  段々車が増えてきて、高速だけど全然高速じゃなくなってきた。  進まない 進まない  もどかしい もどかしい  早く帰りたいのに…っ
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