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ーーーりっくん、遅くてもいいから電話してください。  メッセージでは書き切れない。ほんとは会って話したい。 『もしもし、お待たせ空。どしたの?』  23時過ぎに、りっくんは電話をくれた。たぶん、ほんと今さっき仕事が終わって、急いで階段昇って部屋に入ったところ。  だって息が上がってる。 「あのね…明日のこと、お母さんに『デートでしょ』って言われちゃった」 『え、あー…、すっげ直球…』  ははってりっくんが乾いた声で笑った。僕が言われた時ほどは驚いてないみたいだ。 『…まあ…ある程度の覚悟はしてた…けど…』   沈んだ声。  ちがうの、りっくんっ 「あ、あのね、りっくん。ちがくてっっ。お母さん、いいって…っ」 『え?』 「明日、楽しんできなさいって。りっくんのこと、完璧な彼氏だって…」  全然整理して話せない。 「りっくん明日迎えに来てくれるって言ってたから、だから先に言っとかなきゃって思って…」  りっくんの反応がないからこわい。僕が喋れなくなった時、なんでりっくんはあんなに落ち着いて僕の相手ができるんだろう。  詰めていた息を、はぁー…っと長く吐き出すのが聞こえた。 『ビビったー…。ははは…そっか…。ぜんっぜん完璧なんかじゃねーけどな…』  りっくんの声、なんかぐたっとしてる。 「言う順番、ヘタクソでごめんなさい…」  もっとマシな伝え方、あったと思う。 『ん? いいよいいよ。空は悪くないよ。でもそっかー…。バレたか。つか、認めてもらえたって、言っていいのか…』  スンッて鼻を啜る音が聞こえた。 『明日迎えに行くの緊張するなー…』 「駅にする?」 『いや、行く。せっかく認めてもらったのに行かないとかない』  迷いなく言われた言葉にきゅんとした。  今日はもう遅いからって電話を切って、スマホのアラームと目覚ましと両方かけた。  服も、もう選んである。  あとはちゃんと寝るだけ。それが1番難しい。  明日は  りっくんとデートだ!!  朝起きて、母に会うのが妙に恥ずかしかった。  でも母は至って普通で、僕の服を見て「うん、可愛い」って言った。  今日はユルいシルエットのカットソーにクロップド丈のチノパン。それに一応カーディガンを持っていく。映画館、寒いかもしれないし。 「今日もお迎えあり?」  イングリッシュマフィンにクリームチーズを塗りながら母が訊いた。 「あ、うん。来てくれるって」  僕はいちごジャムを塗る。父はまだ起きてきていない。 「昨日のこと話したの?」  母がちらっと僕を見た。 「うん、話したよ。一応」  応えながらちょっとドキドキした。 「そっか。その上で迎えに来てくれるんだ。なんかほんと格好いいわね」  いいなーって言いながら、母がマフィンを齧った。  約束の時間にチャイムが鳴って、僕がトートバッグを掴んで玄関に行こうとしたら、母が「お見送りしてもいい?」って訊いた。 「え、わ、わかんない…」 「じゃ、しちゃお。律くんにおはようも言いたいし」  そう言って母は弾んだ足取りで玄関に向かった。 「待ってお母さん。ドアは僕が開けるっっ」  1番にりっくんに会うのは僕っっ  争うように玄関に向かって、でも母は上り框で止まった。  スニーカーを突っかけて玄関ドアのノブを回した。    ドキドキする…っ
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