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「高山」  神谷に声をかけられてハッとして目を上げた。 「この後は? 外で親が待ってたりすんの?」 「あ、ううん。式終わったら先帰るって言ってた」 「ね、ね、じゃあ写真撮ろうよ。あたしスマホ持ってきてるから」  里田さんが制服のポケットからこそっとスマホを覗かせた。 「オレも持ってる。高山は?」 「僕はまだ。春休みに買いに行くことになってる」    スマホは、高校合格祝いで買ってもらうことになってた。 「そっか、そっか。じゃあたしと神谷くんで撮っといて、後で高山くんにあげるね。みんな高校一緒だし」  里田さんがそう言って笑い、神谷が頷いた。  4月になったら、僕たちは同じ高校に入学する。…りっくんの卒業した一高に。  昇降口を出ると、まだたくさんの卒業生が残っていて、写真を撮ったり喋ったりしていた。僕たちもその輪に加わって、別れてしまう友人と思い出話なんかをした。 「高山くん、ほらこっち来て。写真写真」  里田さんが手招きする。 「でもさ、よく考えたら撮らなくてもよくない? また会うのに」 「いやさ、これは中学卒業の記念だから、な?」  そう言った神谷が僕の肩に腕を回した。そしてぐいっと引き寄せられる。 「神谷、近いし」 「いいじゃん、いいじゃん。ほら撮るぞー」  片手で構えた神谷のスマホの向こうに、    あ!  りっくん…っ!  慌てて視線を外したけれど、一瞬目が合った。いつもは先に目を逸らすりっくんが、僕の方をじっと見ていた。 「高山、スマホ見て」  神谷が肩に回している手で僕の腕をトントンとたたいた。 「あ…、うん…」  パシャッというシャッター音。 「誰か通った?」  神谷は僕の肩に回した腕を外さないまま、今撮った写真を見てる。  僕が神谷の腕を持ち上げようとすると、またぐいっと抱き寄せられた。 「さっきのイマイチ。もう一回撮り直し」  そう言いながらまた同じようにカメラを構えた。さらにもう一度撮り直すのは面倒だから、今度はちゃんと笑顔を作った。笑顔を作りながら、僕は今し方見たりっくんの顔を思い出してる。さっきからとくとくと鼓動が跳ねてきている。 「あ、高山くんあたしとも撮ろー、2ショット」  今度は里田さんが僕の腕に腕を絡めた。そして神谷と同じように顔を近付けて、パシャッとシャッターを切った。 「やだぁ。やっぱ高山くんの方が可愛い」  撮った写真を見て笑いながら里田さんが言う。 『空っていうんだ。かわいーだろ?』  昔りっくんに言われた言葉が蘇った。 「大丈夫、里田が可愛くないわけじゃないぞ。高山が可愛すぎるだけ」  ひょい、と覗き込んだ神谷がそんなことを言った。 「神谷くん、それ慰めてるの?」  里田さんがじろりと神谷を睨んだ。
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