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目を覚ますと、人間になっていた。
鼻先が触れそうな程の至近距離でまじまじと僕の顔を覗き込んでいた瑛士くんは、十六年ずっとそばにいたご主人様だ。
「よう、リク。人間になれたんだな」
「……飼い犬が人間になるなんて異常な事態に、なんでそんな平然としてるの?」
「えっ、何、リクは人間になれて嬉しくないの?」
嬉しいとか嬉しくないとかより、まずなぜ自分が人間になっているのか、状況がうまく飲み込めない。
横になっていたのは瑛士くんの部屋のベッドで、ちゃんと服だって着ている。
よく着せてもらっていた小型犬用のベストじゃなくて、瑛士くんのお気に入りのTシャツとスウェット。
手にはちゃんと五本の細長い指が生えていて、ぐーぱーぐーぱー握って開いてを繰り返すと、ちゃんと自分の意思の通りに動いてくれた。
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