ミーハードッグ

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「ごすじん様 僕はハクナマチャチャしたいのです」 「ポチ、あれはアニメ映画だ あんな愉快なイボイノシシはいないし、ミーアキャットも歌わないよ」 それでも愛犬は諦めない 昨日見た金曜ロードショーの影響で、自由と愛に目覚めてしまった サバンナに行きたいとキャンキャン吠える 「ごすじん様 僕ならあのハイエナにも負けません!」 「負けるよ一撃だよ瞬殺だよ ポチ、君はただのポメラニアンだ 室内でぬくぬくと育った小型犬だ」 「だからこそです!野生でたくましく成長したいのです!」 「ポチ、歌って踊るあのシーンのどこに野生を感じたんだい あんな楽しい現実逃避でどうやってたくましくなるんだい」 どれだけ懇切丁寧に説明しても、キラキラとした瞳の輝きは衰えず チャカチャカと走り回りうるさくて仕方ない 「ごすじん様 どうか僕をサバンナに連れて行ってください!!」 「わかった じゃあ本当のサバンナを見せよう でもいいかい?もしも嫌だと思ったらすぐに言うんだよ」 「大丈夫です!!嫌になるわけございません!!」 まんまと大人しくなった愛犬を膝に乗せ、サバンナのドキュメンタリー映画を見せる 大迫力のヌー 怖いというより不気味なハイエナ そしてライオンの捕食シーン 狩りの成功率は意外と低く、シマウマを襲っても返り討ちにあう始末 どうにかやっと子供を襲い、口を真っ赤に染めながらはらわたを貪る現実の生命 「……ごすじん様 僕サバンナ行くの止めます」 「そうだな、私も大人げなかった もう二度としないよ 今日は山奥のキャンプ場へ遊びに行こう そこで自然を感じながら遊ぶといい」 いつの間にか前足で目を隠した毛玉がブルブルと震えていた あまりのビビりっぷりに罪悪感すら覚えてしまい、謝りながら優しく撫でる 「ポチ、サバンナなんかに行ってしまったら近所の肉屋のおばちゃんに会えないし、何よりも私に会えなくなる だからどうか行かないでくれよ?」 「わかりました でも今日は山奥に行くんですよね」 「あぁそうだ アカハシコサイチョウもいなければあの岩もないが、それでも充分楽しいだろうさ」 「じゃあクマを倒します!!鎌を咥えて大活躍です!! アレなら飼い犬も参戦してましたよね!?」 しまった! 次はそっちかぁ~!!
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