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「おい……お前、大丈夫か?」
彼との出会いは冷たい雨が降りしきる2月13日の金曜日。俺が所属するインディーズバンドのライブ帰り、土砂降りの雨に踏み躙られてボロ雑巾みたく汚れた色白の彼は、目を凝らさなければ分からないほど浅い呼吸を歩道の隅で何度も繰り返す。
「おいって……」
強引に腕を取ってみてもうんともすんとも言わない彼は、返事の代わりにゆったりと眉間に皺を寄せる。そのまま俺が揺すり続けると、嫌々彼の瞼が上がってモルダバイトみたいに輝く瞳に薄っすらと俺を映した。
「にゃあ…………」
開口一番、彼から零れた言葉はそんな戯れだけだった。
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