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…見たい。あいつのいろんな顔を見てみたい。俺の心に巣食ったあいつと直接言葉を交わしてみたい。一度見ただけでこんなに頭を占領されるなんて、俺は何があったんだろう。自分で思っているより暇なのかもしれない。俺は家に帰る度に妄想を膨らませていた。自分が何か言い、向こうの反応を思い描く。オタクたちがしているこの「妄想」は本当に楽しかった。
「ちゃんと授業出てるのか」
「っるせーなお前舐めてんのか!?」
何を言っても強く返される、そんな妄想がどんどん膨らんでいった。
ある日俺はもう妄想の世界では足りなくなり、
「おい、3年D組の五百雀(いおじゃく)とはお前か」
「…! 俺が五百雀だ、お前、なんだ、何の用だ!」
あーあー。そんなあからさまに笑顔になっちゃって、それじゃボス、ばればれですよ。強そうな言葉が不釣り合いなほど目がきらきらしてるじゃないですか。
「本当の名前は雲母(きらら)だろう? 似合わないな、女子みたいだ。不良と噂の五百雀絢人が本当はそんな可愛い名前だとはな、クラスメイトも驚くだろう」
「……おい…名前なんで知ってんだ……生徒会長ごときが…俺の名前なんて関係ねえだろ!」
「大ありだ」
会長、ちょっと殺し文句言い過ぎっすよ、ボスが爆発しちゃいますって。
「お前、放課後俺の寮の部屋に来い。月寮だ」
「…は?」
「そこからは案内してやる、8時だぞ」
…はあ、言ってしまった。あいつが、8時に俺の部屋に…。手を出さないようにしないと。俺あんな決まり文句言えたんだ…。
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