アンドロイドは歩き続ける

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 アンドロイドは目覚めた。  暗闇。横たわっているようだ。  体を動かすとどうやらアンドロイドは狭い箱の中に入っているようだった。  カタカタと揺れていた蓋を取り外すと、空間が広がっていた。部屋には生体反応がない。誰もいないようだ。  おかしい。私は研究所にいたはずなのに、とアンドロイドは考える。  起動したら真っ先に博士に挨拶するようプログラムされているのに。  GPSは機能しない。しかし、ここが研究所でないことはよくわかる。  暗闇なので赤外線のセンサーで見回すと、この部屋は高価なものがたくさん置いてある。他のアンドロイドもそうだし、金銀財宝、そんなものが音もなく横たわっている。  金貨の山に手を突っ込んで、上から落とす。真っ暗な空間にじゃらじゃらと音がした。  人がいないこの部屋では、それらはなんの意味もなさない。  センサーの感知した情報によれば、ここは地下らしい。ここにいても博士は来ないだろう。アンドロイドは地上へ出ようと試みる。  幸い近くに上り階段があるようだ。時間にして一時間ほどだろうか、曲がりくねった階段を最短経路を計算しながらてくてくと登っていくと、光が見えてきた。  天井に扉がある。開けようとしても開かない。鍵がかかっているようだ。  アンドロイドは鍵の部分を力ずくでみしゃりと破壊すると、重たい扉を片腕で軽々と開けた。  ぎぃぎぃ、古い扉が軋む音がした。
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