2

2/2
前へ
/9ページ
次へ
「あ! いた!」 「……え」  まさか。来る途中何度も、もう居ないんじゃないかなって、こんなに寒いんだから暖かいところに居るって、あたしは呑気に考えてイチの背中を追ってきた。それなのに。  すぐに柴犬のところへ駆け寄って行ったイチは、雪で毛が覆われてしまっている柴犬にそっと手を伸ばしている。  怖くないのかな。噛みついてきたりしないかな。  あたしはイチの心配をする。 「お前、なんでここにずっと居るんだよ! こんな冷たくなって。死んじゃうぞ!」  素手で犬の体の雪を払ってあげて、イチはぎゅっと柴犬を抱きしめた。  柴犬はそれでも、真っ直ぐに一点を見つめたままだ。 「イチ、学校。遅刻しちゃう」  しばらく動きそうになくなってしまったイチに、あたしは声をかける。 「うん……行ってくるな」  イチがそう言って柴犬から離れると、一瞬だけ耳がぴくりと動いた気がした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加