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 今朝の雪はすっかり溶けて、空には青空が広がる。夜にはまた雪になる予報だから、風は冷たく吹きつけてくる。  陽の当たる交差点の向こう側、ハチはやっぱり真っ直ぐに前を見つめている。  瞳の先には、置かれたばかりの小さな花束。イチがその花束の場所まで歩いていくから、あたしもついていった。  この花束は、お花屋のおばさんが毎日置いてくれていると、イチは教えてくれた。  手を合わせて、目を閉じる。 「俺、じいさんのことなんにも知らないけど、あのままじゃハチが可哀想だ。じいさんのこと追いかけて死んじゃうかもしれない。それでもいいってハチは思ってるのかな? だけどさ、じいさんはハチに死んでほしくないよね? 生きていて欲しいよね?」  花束に話しかけたところで、返事なんて返ってはこない。イチの横顔をチラッと見ると、目に溢れそうなくらいに涙を溜め込んでいた。 「俺、ハチのこと連れて帰ってもいいかな? 俺が責任もってハチのこと大切にする。あのまま放って置けないから。だから、一緒に連れて帰っても、いいですか?」  ブワッと突然突風が吹きつけてきて、イチの瞳からこぼれ落ちた涙をさらっていった。  迷いなくハチに近づいていくイチのことを、あたしは少しだけ距離を置いて見守る。
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