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「今、サバイバルオーディション番組を見るのにハマってんの!」
久しぶりに会ったアイナは、鼻息荒く言う。
私は、そういう番組があることは知っていたけれど、興味がなかった。オーディションの途中経過なんて見て、何になるんだろう。結果だけ知れば良くない? って考えていた。
「一日一票投票できるんだよ! ルイも投票してよ。この子! あたしの推し!」
ぐい、と差し出されたスマートフォンには、制服姿の女の子の写真。可愛いといえば可愛いけれど、すごく可愛いってわけでもない。そのへんにいそうな子。女子高だったらゴロゴロいそうだし、共学だってクラスに絶対一人はこんな子がいるような気がする。それに、――私と大差ないとも思う。
「他にもね、可愛い子がいっぱいいるんだよ。あ、この子は、めっちゃ歌がうまい。で、この子はダンスがバキバキで超かっこいい! この子は、なんかよくわかんないけど魅力があるの」
なんかよくわからない魅力って、なんだろう。
「とにかく! あたしの推し、どうしてもデビューさせたいから、一緒に推して! おねがい、おねがい!」
テーブルにデザートが届いた。アイナは自分のアイスクリームのてっぺんにちょこん、とのせられていたマカロンをつまむと、私のアイスにちょこん、とのせる。どうもこれが、投票への賄賂、のようなものらしい。
「わかった。とりあえず、見てみる」
「やった! ……ん? 見てみる? 投票は毎日やってるんだってば。とにかく、今日から! 今から! 清き一票を、何卒!」
マカロンを口にぽん、と入れた。ちょこっとだけついたアイスクリームが、キンと冷たい。
ムグムグとそれを咀嚼しながら、アイナのお祈りポーズを見ていた。
アイナはなぜ、こんなに熱くなっているんだろう。自分の人生ではなく、他人の人生に。
口の中で粉々になって、ドロドロになったマカロンを、ゴクンと飲む。
「どうやって投票すればいい? 今ここでできる?」
アイナの瞳が、まるでステージに立つアイドルのように輝いた。
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